スマートフォンの次の課題はネットワークの「5G」化だ。10Gbpsもの通信速度が期待され、企業や大学の研究開発が急ピッチで進んでいる。標準化、実用化は進むのか。
通信速度がどれほど高速になろうとも、常にその先があるものだ。通信ネットワークの高速化に取り組んでいる人々もその点は抜かりなく、既に次の“大物”に向けた作業に取り掛かっているようだ。大多数のユーザーが4Gや4G LTEによるスマートフォン通信の恩恵をまだ受けている中、あるいは旧世代の3G機種を下取りに出して時代の流れに追い付こうとしている中にあって、既に「5G」という言葉が浮上しつつある。
これは朗報だ。だが手放しで喜べるわけではない。この技術が登場するのはかなり先のことだ。何年も先なのである。英サリー大学付属Centre for Communication Systems Research(CCSR)のディレクターでモバイル無線通信を専門とするラヒム・タフォゾリ教授によると、「5Gが出てくるまで待つ」というのであれば、相当長い間待たなくてはならないという。「技術的な制約や、既存の4Gネットワークを運用するための電力コストが非常に高いことなど、通信速度のさらなる高速化に向けては数多くの障害が存在する。5Gが普及するのは2020年以降になるだろう」とタフォゾリ氏は語る。
携帯端末の進歩のペースを考えれば、8年というのは非常に長い時間だ。8年前の2004年のベストセラー携帯電話は、初代の「Motorola RAZR」と「Nokia 2600」だった。だが現実には、2020年は目前に迫っており、タフォゾリ氏の研究チームには巨額の資金援助が寄せられている。最近の発表によると、5600万米ドルに相当する巨額の援助が英国政府から同チームに提供される見込みだ。また、韓国Samsung、中国Huawei、英AIRCOM Internationalなど多数の企業が資金を提供している。
同チームのミッションは、帯域利用効率と電力効率に優れ、10Gbpsの通信速度を提供するネットワークを開発することだ。
超高速な4G LTE携帯電話に十分満足している人であれば、「なぜそんなに急ぐのか」と疑問に思うかもしれない。当然の疑問だが、その答えは「トラフィック」にある。全世界の人々が「Apple iPhone 5」や「Samsung Galaxy Note II」などの最新の高速スマートフォンを、われ先に手に入れようとしている。この状況を見れば、ネットワークがいずれ限界に達するのは明らかだ。これは次のような状況に例えることができるだろう。1日当たりの通勤者の数が10万人であれば、6車線の高速道路でも十分に余裕がある。しかしこの道路に何百万台もの車が押し寄せたら、深刻な渋滞が発生する(参考記事:スマートフォンの通信障害でも回線を止めない「無線LAN」の活用法)。
タフォゾリ氏は米GigaOMによる最近のインタビューで次のように答えている。
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