従業員が個人向けクラウドストレージを利用すると、IT管理者の手が届かないところにデータが保存されてしまう。利便性を損なうことなく、その問題を解決する企業向けクラウドストレージの構築方法を紹介する。
個人向けのクラウドストレージやファイル共有サービスは、どこからでもファイルの保存やアクセスができて便利だが、IT管理者が必要とする管理ツールがない。
その不満を解消すべく、さまざまな企業向けのクラウドストレージサービスが登場している。ユーザーにとって便利なモバイルアクセス機能を妨げずに、管理者がクラウドの利用状態をコントロールできる機能を備えている。また、ファイルサーバを使ったソリューションも選択肢の1つになっている(関連記事:安価なオンラインファイル共有・ストレージサービスを検討する)。
消費者はストレージを安価に、ときには無料で入手できる。そこで、米Boxなどの企業向けクラウドストレージサービスは、付加価値として「セキュリティ」機能を提供する。企業向けサービスは、顧客が必要とするセキュリティだけでなく、コラボレーション機能を提供している他、企業のディレクトリサービスとの統合も比較的スムーズに行える。
もちろんクラウドベースのストレージサービスは、Boxだけではない。米Microsoftや米Apple、米Google、米Dropboxなどもこの市場に参入している。例えばDropboxは、「Dropbox for Teams」という企業向けのクラウドファイル共有サービスを提供している。そこで問題となるのは、「企業向けクラウドサービスは個人向けサービスにどうやって対抗するのか?」だ(関連記事:IT管理者にとって悪夢になり得るDropboxのSaaSアプリ連携)。
ポイントの1つは、特定のプラットフォームに縛られるかどうかになる。例えば、AndroidはGoogleが開発していることを考えると、iOS端末とAndroid端末でGoogle Driveの機能性が全く同じになるとは思えない。その点、Boxは個人向けクラウドストレージを提供していないので、同社が特化している企業向けサービスの分野では有利だ。これが、少なくとも今の時点では、Boxのような専業者がエンタープライズクラウドストレージ市場において成功を収めている理由だ。
しかしいずれにせよ、ファイルが企業のIT管理者の手が届かないクラウドに保存されることに変わりはない。
ベンダーの中には、IT担当者が管理できるオンプレミスのファイルサーバを使って、ファイルアクセスを提供しているところもある。「Novell Filr」はそのようなサービスの1例だ。
従来のファイルサーバを基盤とするサービスは、クラウドの時代には完全に場違いな印象を受ける。しかし、オンプレミスのファイルサーバを使って場所を問わないファイルアクセスを提供するシステムを構築することにもメリットはある。データセンターにサーバがあるため、IT担当者がセキュリティポリシーやその他の環境にとって重要な設定を管理できるのだ。そう考えると、IT担当者によって管理でき、場所を問わないアクセスを提供するサービスは意外な方法で容易に実現できるのかもしれない。
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