2013年7月に公開されたWindows 8.1 Enterprise Previewには企業向けの新機能が多数搭載されている。だが、企業導入を左右するのはCIOでもIT部門でもなく、エンドユーザーだ。
米Microsoftは2013年7月30日(米国時間)に「Windows8.1 Enterprise Preview」の提供を開始した。このバージョンには、新しいOSに対する企業ユーザーの興味をかき立てるような新しい機能が追加されている。さらにMicrosoftは、「Windows 8.1のライフサイクルサポートは既存製品のサポートの慣習に従う」とあらためて表明した。
Microsoftによれば、ライフサイクルサポートに関する問い合わせが多数寄せられたという。Windows 8.1を自社システムに展開、またはテストすることを検討しているIT担当であれば、その点をまず問い合わせるのは当然の行動だ。
「Microsoft製品の導入を検討する場合は、まず製品のサポート期間を問い合わせる。新しくリリースされる製品の導入を見送るかどうかを検討する際、その製品がいつまでサポートされるのかを考慮することがとりわけ重要になってきたからだ」と、米大手製薬会社のIT管理責任者であるブライアン・カッツ氏は話す。
ITコンサルティング会社、米Enderle Groupの主席アナリスト、ロブ・エンダール氏は、「企業は製品のライフサイクルのサポート期間を特に重視する。一般消費者に比べて、製品利用の契約期間が長期にわたることが多く、1つの製品を使い続ける期間も長期になるからだ」と解説する。
MicrosoftはWindowsの最新リリースについての同社ブログエントリーの中で、「Windows 8ユーザーは、Windows 8 のアップデート版であるWindows 8.1がリリースされてからの2年間、Windows 8.1に移行するための期間としてWindows 8のライフサイクルのサポートを受け続けることができる」と説明している。
同社WebサイトのWindows製品のサポートライフサイクルに関するページには、「Windows 8 Enterpriseのメインストリームサポートは2018年1月9日に終了、延長サポートも2023年1月10日に終了する」との記述がある。
Windows 8.1 Enterprise Previewには、企業のIT部門に対してシステムのアップグレードを促したいというMicrosoftの戦略が現れている。大企業のIT部門に、新しいOSを自社の環境に適用しようという意欲を持たせるための機能が多数盛り込まれている。
最新のリリースにはWindows 8にはなかった機能、例えば企業のIT部門が自社独自のWindows 8環境をブートするUSBドライブイメージの作成を支援する、「Windows To Go Creator」などが含まれている。また、ユーザー独自の画像やアプリケーションをスタート画面に表示できるようになったため、特定用途のために、エンドユーザー自身がシステムのルック&フィールをカスタマイズする必要はなくなる。さらにWindows 8.1 Previewには、エンドユーザーが仮想プライベートネットワーク(VPN)を経由することなく、企業内ネットワークにリモートでアクセスできる機能がある。
Windows 8.1 の機能のうち、企業・組織向けのものとして既に発表されているのは、「OpenMDM(モバイルデバイス管理)」「Workplace Join」機能の他、業務用データのリモートワイプ、Windowsストアアプリケーションに共通のユーザーエクスペリエンスを提供するためのアクセス権の割り当て、モバイルブロードバンドのテザリング、ワイヤレスディスプレーの規格であるMiracastのネイティブサポート、起動後にデスクトップを表示する「Boot to Desktop」機能などがある。
Workplace Joinを利用すると、IT管理者は、ユーザー自身の選んだデバイスを使って企業リソースにアクセスする権限をエンドユーザーに与えることができる。業務データのリモートワイプ機能を利用すれば、BYOD(Bring Your Own Device)プログラムを導入した際にも、個人用データを保持しつつ、エンドユーザーの端末から業務データをリモートでワイプすることが可能になる。
Windows 8.1 Enterprise Previewに含まれているエンタープライズ向けの機能について、ここまでに述べたもの以外は旧バージョンのWindowsからの持ち越しだ。例えば、仮想デスクトップインフラや、ユーザーが社内ネットワーク内でアクセスするファイル/アプリケーションを統制してセキュアな環境を構築する「AppLocker」機能などが挙げられる。
「Windows 8.1のエンタープライズ機能で、企業ユーザーの意欲をそそることができれば、企業の新しいOSへの移行は進むだろう」と前出のエンダール氏は言う。「ただし、エンドユーザーがWindows 8を使いたいという気持ちにならないことには、結局OSのアップグレードは実現しない」とも同氏は付け加えた。
「企業のIT環境がどのプラットフォームに移行するかの決め手になるのは、エンドユーザーの意向だ」
ところで2013年8月現在、Microsoftは6月27日(米国時間)に公開したばかりのWindows 8.1 Previewの更新プログラムを既に複数回リリースしている。OS更新のペースは、Microsoftのリリースサイクル短期化計画に沿ったものになる。従来は月1回のペースで火曜日(日本では水曜日)にまとめて更新されていたが、Windows 8.1 Previewについては、バグを解消するたびに更新されたバージョンが随時リリースされている。
実際、一連の更新プログラムには、一部のネットワーク操作で、サービスメタデータパッケージを想定通りに処理していないバグの修正が含まれる。つまり、Windows 8.1で注目される機能の1つであった、一部のデバイスをWi-Fiホットスポットとしても活用できるという「Wi-Fiテザリング」機能は、今のところ期待通りには動作しないということだ。
「SkyDrive」の安定性や、「Internet Explorer 11」の改良に焦点を当てた更新も予定されている。現時点で最新の更新プログラムには、VMScriptコードでタイマー起動されるWebページが期待通りの動作をしないという問題が残っている。
これまでにMicrosoftがリリースしたパッチには、Windows 8.1 Previewの証明書の認証を使用する、VPNへのシングルサインオン(SSO)に関するバグ修正や、Windows 8.1 PreviewやWindows RT 8.1 Previewに対応していないデバイスに対する度重なる推奨アップデートに関する修正も含まれる。さらに、ListViewのコンテンツが滑らかにスクロールするようにしたり、SkyDriveのファイル検索機能も改善している。
Windows 8.1 PreviewおよびWindows RT 8.1 Previewでは、このようなバグ修正用ファイルはWindows 8のアップデートサービスの一環としてMicrosoftから直接送信される。ただし、ユーザー側で自動更新機能をあらかじめオンにしておかなければならない。
アップデートはいつの間にか実行される場合がある。また、このようなアップデートについては、Microsoftから事前の公式な告知はない。自動更新をオンに指定していれば、更新されたシステムファイルの詳細は、更新履歴で確認できる。
一方、必須ではない更新プログラムやアプリケーションについては、ユーザーに必要な権限を確認しなければ、自動的にインストールされることはなく、ユーザーのデバイスに既にインストールされているものを勝手に削除することもない。
MicrosoftはWindows 8.1のRTM(製造工程向けリリース)バージョンを2013年9月中にリリースする予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...