ITを活用して顧客接点の拡大を図るIKEAは、各種のイノベーションを成功させる一方で、ITシステムに課題を抱えていた。同社CIOに話を聞いた。
1943年にスウェーデンで雑貨店として創業したIKEAは、今や売上高270億ポンドを誇る世界最大の家具量販店になった。今、そのIKEAが最優先事項としているのは、デジタルと従来の方法を併用して、マルチチャネルで顧客との距離を縮めることだ。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年12月18日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
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IKEAには、実店舗、コンタクトセンター、オンライン、モバイルの4種類のチャネルがあるが、売上の95%は実店舗から生まれている。かといって、デジタルチャネルの人気がないわけではない。導入から10年以上になるIKEAのWebサイトの訪問者数は年間12億に上り、そのうち7億5000万はユニークビジターだ。「全人類の10人に1人以上の計算になる」とパウロ・チネリCIOは語る。
「とても人気のあるサイトだ。eコマース事業を拡大しているので、ますます人気は高まるだろう」
この5〜10年、IKEAは一部の国でしかオンライン事業を展開していなかったが、2年前にeコマースにてこ入れをし、現在は13カ国でオンライン販売を行っている。また、オンラインで購入できる商品も拡充している。IKEAの取扱商品は1万種類強あるが、以前オンラインで販売していたのはわずか2000〜3000種類にすぎなかった。現在は少なくとも取扱商品の70%をオンラインでも提供している。
さらに最近は、さまざまなモバイルコマースアプリケーションを提供している。以前からIKEAのカタログをブラウズできるモバイルアプリは提供していたが、2012年に複数の国で8〜10種類のアプリをリリースした。これらのアプリでは、モバイルでの買い物の他、ストアの場所の検索や拡張現実(AR)技術を利用できる。
IKEAのARアプリは、自宅に家具を配置した様子をスマートフォンで確認できる。このアプリは売上に大きく貢献しているだけでなく、アクセス数の向上やソーシャルメディアでの話題作りにもつながっている。チネリ氏は、投資に見合うだけの見返りが得られていると話す。
「IKEAでは、顧客ロイヤルティーやエンゲージメントの向上なども含め、広い意味でROIを捉えている。このアプリのおかげで顧客との接点が増えているとしたら、興味深いことだ」
顧客との接点の強化はIKEAの優先課題の1つだが、実際にこのアプリのおかげで接点は増えている。チネリ氏は、顧客が望む方法でIKEAと接触を持ってもらえる限り、どのチャネルから顧客がエンゲージするかについてはこだわっていない。
「目的は1つではない。売り上げにつながるだけでなく、顧客が考え、楽しめることも重要だ」
「顧客がチャネル間をシームレスに移動できる必要があるが、これを実現するのは簡単ではない」と、チネリ氏は言う。IKEAは、現在も多くのレガシーシステムに依存している。これがチャネル間のシームレスな移動を実現する計画の障害になるかもしれない。
例えば、IKEAでは返品処理と顧客の分割払いの処理にそれぞれ専用のシステムを使っている。
「ゼロから手を付けられればもっと簡単だが、そうもいかない」とチネリ氏は語る。「サービスが分散しているために、シームレスなエクスペリエンスをなかなか実現できないでいる。だが、システムを集約する計画を既に立てているので、後は時間の問題だ。一夜にしては成らないが」
チネリ氏は、各種システムを統合して、シームレスに連携させたいと考えている。そのうちの1つがIKEAの会員プログラム「IKEA FAMILY」で、6000万人のメンバーがデータベースに登録されている。「これは莫大な資産であり、顧客のためのサービスだ。もっと活用できる可能性がある」
この会員プログラムを他のシステムとよりシームレスに統合できれば、さまざまな見返りがあるだろう。例えば、IKEA FAMILYカードをレジで読み取るようにすれば、顧客の購入履歴を把握でき、商品の返却が必要になった際に領収書が不要になる。そこで、「上層部の人間と話を始めている」という。
IKEAのストアの大半は、1つ屋根の下に全商品を複数展示できる倉庫を使った大型の郊外店だが、ハイストリート(都市部の繁華街)にも触手を伸ばしている。IKEAは、フランスでキッチン専用のストアをオープンするなど、幾つかの国で都市型店舗のパイロット営業を実施している。
「都市部でIKEAのモデルを機能させるのは簡単ではない」とチネリ氏。「お客さまに喜ばれているポイントは、1店舗で何でも見つかる品ぞろえと、買ったものを持ち帰ることですぐに得られる満足感だ。これは、都市型店舗では不可能でないにしても、達成するのは難しい」
しかし、デジタルの世界が、ハイストリート進出の可能性を開いている。戦略的モデルとするには時期尚早だが、IKEAは英チェーンストアTescoが韓国の地下鉄で展開している仮想ストアなどを参考に、以下のような仮想エクスペリエンスを検討しているという。
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