“第2の9.11”を起こさないための必要悪か
NSA元長官が諜報活動の正当性を主張 「フリーダムはフリーじゃない」
「NSAに問題があるとすれば、それはNSA自体の問題ではなく、人々がNSAに求めたことに問題がある」――。NSAの元長官は、こう主張する。諜報活動は“平和の代償”なのか。
米国家安全保障局(NSA)による米国内での大規模な諜報活動。それに関連した機密情報をエドワード・スノーデン氏がリークしてから1年以上になる。NSAの元長官であるキース・B・アレクサンダー氏は先日、同組織の活動の正当性を強く訴えるとともに、NSAのシステムのセキュリティを強固にするコンピューティングパラダイムを、企業も受け入れるよう呼びかけた。
2014年6月下旬に開催された「Gartner Security and Risk Management Summit 2014」の基調講演で、元陸軍大将であるアレクサンダー氏は「大量のメタデータを収集するNSAのプログラムは、テロの抑止や米国の軍事作戦の支援、米国の安全保障に不可欠である」と述べた。同氏は9年近くにわたってNSAを統括し、2010年以降は米サイバー軍司令官も務めた。
アレクサンダー氏は、全世界で暴力が拡大している状況について触れ、ISIS(イラク・シリア・イスラム国)によって1700人以上が処刑されたことや、イエメン、ソマリア、北アフリカ、アフガニスタン、パキスタンなどの国々でテロが日常的な出来事になっている現状を指摘した。
さらに同氏は、「2013年には全世界で1万1000件以上のテロが発生し、その死者数は2万人以上に達した」とする米メリーランド大学の調査結果を紹介した。
「全世界のテロをめぐる状況は改善されるどころか、ますます悪化している」とアレクサンダー氏は語った。「2013年1年間で死者数は2倍近くに増えた。2014年はその数がさらに増えるだろう」
アレクサンダー氏は、世界のテロの現状と比べて米国内では、はるかに優れたセキュリティが維持されている状況を指摘した。米国で比較的平穏が保たれているのは、NSAのメタデータ収集プログラムのおかげだとまでは言わなかったものの、「この状況は決して偶然ではない」と述べた。
「これは米軍、治安当局、諜報機関が連係して、わが国と同盟国の安全を守るために努力した成果だ。フリーダム(自由)はフリー(タダ)ではない」と同氏は語った。
アレクサンダー氏によると、NSAの元嘱託職員であるスノーデン氏によるリークは、米国とヨーロッパの同盟国に大きなダメージを与える恐れがあるという。スノーデン氏はNSA職員という立場を利用して、NSAの調査/データ収集プログラムに関する数千ページに及ぶ資料を手に入れた。
「われわれが従来、テロリストに対抗するために用いてきた手段の一部が彼らに知られてしまった」とアレクサンダー氏は述べた。同氏によると、ヨーロッパの諜報機関からの情報として、2013年にケニヤで起きたショッピングモール襲撃事件では、スノーデン事件を機にテロリストたちがNSAの警戒をすり抜ける手段を変えていたことが明らかにされたという。
「(ケニヤの)ウェストゲートモール襲撃事件をわれわれは予見できなかった。以前であれば予見できたはずだ」とアレクサンダー氏は語った。「つまり、テロリストらは一連のリークから学んだのか、あるいは皮肉にも、リーク事件とちょうど同じ時期に戦術を変更したということだ」
さらにアレクサンダー氏は、「NSAはこの1年間、ホワイトハウスと米議会、さらに連邦裁判所やアメリカ自由人権協会など広範な機関や組織の調査を受けたが、いずれの調査でもNSAが一般市民を守るために、明確に規定された手続きに従っていることが確認された」ことを詳しく説明した。
「テロリストの攻撃を特定し、それを阻止する目的以外でNSAがデータを利用したという証拠は存在しない」と同氏は語った。「われわれは誤解が生じるのを防ぐためにオープンな議論を行っている。NSAに問題があるとすれば、それはNSA自体の問題ではなく、人々がNSAに求めたことに問題があるのだ」
「私の考えでは、NSAは効果的、合法的、かつ重要な組織だ」と同氏は続けた。「NSAの機能を失えば、われわれが阻止しようとしてきた事態が起きるだろう。「私がNSAの活動を説明するのではなく、“第2の9.11”がなぜ起きたのかを説明するようなことになっては困る。今日、われわれはこうした事件を防ぐために格闘しており、この取り組みは2010年代を通じて続くだろう」
セキュリティに優れるクラウドベースのシンクライアントモデル
アレクサンダー氏は企業のセキュリティ担当者に対し、従来のファットクライアントコンピュータをシンクライアントに置き換えたモデルを採用するよう促した。シンクライアントは、クラウドなどの集中型インフラが提供するコンピューティングパワーとアプリケーションを利用する。
シンクライアントモデルは、数十年前のメインフレーム型システムの基盤をなすパラダイムへの先祖返りのようにも見える。だがアレクサンダー氏は、米国防総省のコンピュータネットワークのセキュリティ改善を支援するNSAの取り組みを通じて、このモデルがセキュリティ面で優れていることを確信したという。
「この取り組みで明らかになったのは、1万5000個以上のサブネットワークが含まれる国防総省のネットワークはあまりにも巨大であり、またリソースが広範囲に分散しているので、有効な防護対策を実現できないことだった」と同氏は語った。
「NSAも同じような問題に直面した」とアレクサンダー氏は付け加えた。同氏がNSAの長官を務めていたころ、同氏のオフィスに3、4台のコンピュータがあり、それぞれ異なるネットワークへアクセスするのに必要だったという。
アレクサンダー氏の在籍期間の終わり近くになってNSAは、クラウド/シンクライアント型モデルへの移行を完了した。「その結果、セキュリティの強化とサービスの改善に加え、5億ドルの経費節減を実現した」と同氏は述べた。
このモデルでは、全てのデータが1カ所に置かれているので、攻撃者にとっては機密データを盗みやすいと思う人がいるかもしれない。だがアレクサンダー氏によると、機密データがエンドポイントに置かれている今日の分散アーキテクチャの方がはるかにセキュリティリスクは高いという。
「悪人たちはエンドポイントに侵入し、ネットワークの速度で探索するので、システム管理者は防御に苦労している。ネットワークで何が起きているのか把握するのは非常に困難だ」とアレクサンダー氏は話す。「私の見方では、防御可能なアーキテクチャについては議論すべきことがたくさんあるが、目指すべき方向はクラウドだと思う」
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