【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ導入のコツは「セット化」「事前シミュレーション」にあり
電子カルテを導入しても使いこなせない医師もいる。その原因の1つに、入力を簡素化するはずの機能を適切に設定できていないことがあるという。電子カルテを長期間、使いやすい状態にするコツを紹介する。
電子カルテ導入済みクリニックの悩み
電子カルテを数年前に導入した診療所に訪問する機会が増えてきました。その際、多くの医師から相談を受けるのが、処方や検査を簡単に入力するための「セット」の見直しおよび適切な配置です。開業当初にさまざまな処方や検査をセット化したものの、都度の変更で崩れたり、最初から適切な配置ではなかったことで必要な情報にたどりつくのが難しかったりすることが多いようです。
机の上や引き出しの中、PCのデスクトップ画面などが散らかってしまい、必要なものを探すのが困難になった経験がある人は多いと思います。整理アドバイザーという職業があるほど、整理整頓は難しいのです。私もあまり整理整頓が得意ではなく、その難しさはよく感じています。
電子カルテを何年使用しても常に使いやすい状態にするには、コツがあります。それは、導入時のルール化と見直しを兼ねたシミュレーションを実施することです。
電子カルテの導入の多くが「突貫工事」
もともと電子カルテは「診療録管理」および「レセプト請求」を行うための入力ツール兼データベースにすぎません。「使いやすい電子カルテ」は、ベンダーや代理店のインストラクターが医師と一緒にセッティングして初めて機能します。しかし、電子カルテ選びにおいて、こうした登録設定が上手なインストラクターがいるかどうかは、案外見落とされているように感じます。
導入準備にあまり時間が取れない場合は、実運用の中で電子カルテのセットやテンプレートを仕上げていきます。さらに時間が取れないときは、過去に導入した別の医療機関のものをベースに設定することもあるようです。どちらにしても、このように突貫工事で電子カルテを設定してしまうと、結局は使いにくくなります。「時間が取れたらセットを見直そう」と思っても、結局見直しをしないまま時間が過ぎてしまい、5年たってあらためて振り返ってみると、さらに混沌とした状態になっていたというようなことが多いようです。
「引き算」と「足し算」の発想で整理する
このように電子カルテにおいては、事前のセット化やその配置(レイアウト)などの基本設計が大切です。計画を立てずに稼働してからその場で修正していたのでは、結局つぎはぎのようになってしまい、効率よく入力できません。事前準備を大切にすることを心掛けた方がよいと思います。
では、どのように事前準備を進めればいいのか。処方や処置、検査、画像などのオーダーについては、設定項目の種類や数に応じて「大セット」「中セット」「小セット」と分けて整理することをお勧めしています。
大セットは、インフルエンザや花粉症など薬や検査が横断的にセットでき、入力内容がパターン化されたものに向いています。問診からカルテ、そして病名まで包括的にまとめられるような場合に用います。同様の症状で受診する患者を想定して、汎用性の高いものを設定していきます。設定のポイントは「薬や検査を少し多めに最大公約数で入れておくこと」です。そうすることで電子カルテ入力時に画面上に大セットを表示して、その患者に必要のない項目を消していく「引き算の運用」ができます。電子カルテは新たに入力するよりも削除する方が、手間が少なくて済みます。
中セットは、複数の処方や検査などをまとめる登録方法です。大セットに当てはまらない場合に使用します。例えば、症状別のグループに分けて設定しておくことをお勧めします。電子カルテの入力時には、中セットを幾つか組み合わせてオーダーを出します。こちらはセット単位で追加する「足し算の運用」となります。その場合でも、一から入力していくよりも作業が簡素化されます。
小セットは、よく使う処方を飲み方まで組み合わせて薬効分類別にまとめておく方法です。例えば「PL配合顆粒」であれば、服用は「分3毎食後」(1日分の薬を1日3回に分けて)、期間は「5日間」と設定して総合感冒薬に分類します。また「ロキソニン」であれば服用は「発熱時」、回数は「5回分」と登録して鎮痛解熱剤に分類するという運用です。こうした分類によって、必要なときに素早く探すことができて便利です。小セットは主に中セットと併用して運用することをお勧めします。中セットに加えて、より細かいオーダーを追加する場合などに有効であり、こちらも足し算の運用だといえます。
シミュレーションは念入りに
この引き算と足し算の考え方でさまざまなセットを登録することで、電子カルテの入力を簡素化できます。もう1つ大切なことは「事前に患者の症状別のシミュレーションを十分に実施しておくこと」です。内科であれば来院が想定される患者のパターンを分析して、感冒やインフルエンザ、花粉症、糖尿病、高血圧、胃腸炎、頭痛などで使用するセットが機能するかどうかを確認しておくとよいでしょう。セットの登録内容を年に1回見直したり、事前準備を行ったりすることで、電子カルテをより長く、便利に使い続けられると考えます。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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