どのようにして不安を解消していったのか
“LINE砲”を受けても落ちないWebサイトを構築 スタバが克服したAWS移行の8つの不安(1/2 ページ)
スターバックスでは、オンラインサービスのシステム基盤をオンプレミスからAWSへ移行することで、急激なアクセス増にも耐え得る仕組みを構築した。しかし、AWSの導入に際しては、大きな不安があったという。
コーヒーチェーン店「スターバックスコーヒー」のブランド公式サイトは、新商品の事前告知日にアクセスが集中する。同時アクセス数が瞬間的に通常時の10倍に跳ね上がることもある。これは消費者の期待の表れである一方で、システム管理者にとっては冷や汗と頭痛の種になっていたという。
こう語るのは、スターバックスコーヒージャパン ファイナンス本部 情報システム部 カスタマーサービスチームの野溝忠利氏。2015年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2015」のセッションで、同社システム基盤のAWS移行と現在の利用状況について明らかにした。
自宅、職場、店舗に次ぐ“第4の場所”とは
スターバックスでは、店舗を自宅や会社/学校に次ぐ「サードプレイス」(第3の場所)と位置付けている。プライベートとパブリックの中間地点、オンとオフの交流地点として居心地の良い店舗作りを目指している。そして近年、同社の店舗戦略を補完するためのデジタル施策にも力を注いでいる。これを「フォースプレイス」(第4の場所)と呼んでいる。それを支えるシステムやサービスが「Customer Facing Systems」だ。日本のマーケット戦略に合わせ、スターバックスコーヒージャパンが独自に開発した。
同社は2011年3月にブランド公式サイトをリニューアルした。それと同時にオンライン会員サービス「My Starbucks membership」を開始し、その後も次々と周辺サービスを立ち上げた。例えば、コーヒーセミナーのWeb申し込みサービス(2012年3月)、スターバックス カード向けオンラインサービス(2012年6月)、「Starbucks eTicket」(2013年6月)、オンラインストア(2013年11月)、「Starbucks eGift」(2014年1月)だ。3年間で7つのサービスをスタートした。
このようにデジタル施策を立て続けに展開し、消費者の好評を博する一方で、システム構造上の問題や市場変化に伴う課題が顕在化してきた。そうした中で、「より多くのお客さまにフォースプレイスを利用していただくに当たり、システム管理者はその課題にどう対応していくかを考える段階に差し掛かった」(野溝氏)という。
システムの特徴がそのまま課題に
My Starbucks membershipをはじめとして構成されるCustomer Facing Systemsには、大きく3つの特徴がある。
まず、全てのシステムは会員認証基盤と密に結合している。7つのサービスの裏には大きく9つのコアシステムがあり、それらはAPIを通じてリアルタイムに連係している。さらに、コアシステムもそれぞれ幾つかのサブシステムと接続する構成となっている。こうしたシステム構成を取ることで「7つのサービスを短期間でスタートすることができた」(野溝氏)という。
スマートフォンの急激な普及に伴い、2012年ごろからスマートフォンからのアクセスが急増した。こうした世の中の変化を受けて、スマートフォン最適化とSNS活用を優先する“スマートフォンファースト”を掲げてサービスを構築してきた。これが2つ目の特徴だ。現在は7割以上のアクセスがスマートフォンからのものとなっている。スマートフォンへのシフトが進むことで、より短期間で大量のアクセスが集中するようになった。
また「新サービスを展開するたびに、アクティブ率の高いユーザーが増えている」(野溝氏)という。会員数だけでなくオンラインストアの取引高も急増している。単なるブランドの公式Webサイトから、オンライン施策を実行するマーケティングプラットフォームへと成長してきた。
システムを構成するこれらの特徴は、そのまま課題にもなった。顧客体験を向上するためにリアルタイムでシームレスなサービス連係を実現した結果、どこかのサービスが高負荷状態になるとそれと連鎖して他サービスのレスポンスが遅延/停止する状態が頻発するようになってしまった。瞬間的な同時アクセス数の増大にもリソースが耐えられなくなっていた。さらに、急速な会員数や取引数の増加によって、近い将来、アプリケーションの処理が完全に追い付かなくなることも明白だった。
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