生徒と進める西大和学園のIT活用【後編】
東大・京大進学校、西大和学園生はなぜ「iPadで学校改革」に本気なのか(1/2 ページ)
高い学習意欲を持つ難関進学校の生徒は、「iPad」などのITを学びにどう生かしたいと考えているのか。西大和学園の生徒組織「iCT運用委員会」のメンバーの声に耳を傾ける。
2015年に東京大学・京都大学の合格者を計109人輩出した、関西有数の難関進学校である西大和学園(奈良県河合町)。前編「東大・京大合格者100人以上、西大和学園はなぜ『iPad』を選んだのか」で紹介した通り、同校は2014年8月、高等学校1年生全330人を対象に米Appleの「iPad Retinaディスプレイモデル Wi-Fi 16GB」を導入したのを皮切りに、学力向上や新たな活動時間の創出を目的としたIT活用をスタートさせた。
西大和学園のiPad活用で特徴的なのは、生徒が活用推進に大きく絡んでいることだ。その象徴ともいえるのが、前編でも紹介した生徒によるIT活用推進グループ「iCT運用委員会」の存在である(写真1)。同校はiCT運用委員会を導入初年度から組織化し、そのメンバーが教員とともにタブレット活用を進めている。前編でも紹介した通り、そもそも同校のiPad導入は、生徒からのIT活用の提案がきっかけで走りだしたといういきさつがある。
iPad導入からは1年もたっておらず、生徒からの提案実現へ向けてはまだ道半ばであるが、西大和学園には徐々に変化が現れつつある。同校の生徒は、iPad導入をどのように感じているのか。iPadをはじめとするITを学びにどう生かせると考えているのか。iCT運用委員会のメンバー3人に聞いた。
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教員研修も担う生徒組織「iCT運用委員会」とは
西大和学園のiCT運用委員会の具体的な活動は、週1回のミーティングを軸に、使い方のルール策定や使用するアプリケーションの選定、啓発活動などだ。さらに同校は、iCT運用委員会に幾つかの権限を与えている。その1つがアプリのダウンロード許可だ。同校は原則として、生徒が勝手にアプリをダウンロードすることを禁止している。ただし、iCT運用委員会が学習用途だと認めた場合には、同委員会の権限でダウンロードを許可できる。
興味深いのは、iCT運用委員会が教員向けのiPad研修会を実施していることだ。西大和学園では、iPad導入とともに教育機関向けオンラインサ―ビス群「Google Apps for Education」の活用を開始しており、これらIT製品/サービスの操作方法や活用事例などのレクチャーをiCT運用委員会が担う。
実際に研修会を開催したメンバーの櫻井勇斗さんは、「操作方法を説明する前に、先生方に『iPadを使うと何が便利になるのか』を伝える必要があると思った」と話す。Google Apps for Educationの一部である学習管理システム(LMS)の「Classroom」とオンラインファイル同期サービス「Google Drive」との連係方法をはじめ、オンラインサービスの利用方法については「特に丁寧に説明する必要があると感じた」と櫻井さんは語る。
iPad導入に先立ち発足 導入当初は不安も
西大和学園がiCT運用委員会を設立したのは、iPad導入の1カ月前に当たる2014年7月のこと。全生徒へiPadを手渡したのは同年8月末の新学期スタート時であり、iCT運用委員会はひと足早く活動を開始した形だ。同校がiCT委員会を早々に立ち上げた理由は、自主的な生徒の活動を早期に実現させるためである。「教員と生徒が『共創』しながらiPad活用を進める体制を築きたかった」と、同校中等部高2学年部長の宮北純宏教諭は語る。
iCT運用委員会設立当時の様子について、委員長の廣河 凜太郎さんは「いよいよ、うちの学校にもiPadが導入されるのかというワクワク感があった」と話す一方、不安もあったと明かす。「学校でiPadを使うといっても、紙のプリントを共有したり、連絡事項のやりとりが電子化されるといったイメージしか持てず、その先の活用が見えなかった」(廣河さん)というのだ。
不安を抱いていたメンバーは廣河さんだけではない。米国留学経験があり、現地校でiPadを使っていたという山本 亮さんもその1人だ。「米国の学校や家庭には、新しいものを取り入れて教育にうまく使っていこうという雰囲気があった」と語る山本さん。学校や家庭の状況が異なる中、「私たちにも本当にうまく活用できるのか不安があった」とiPad導入当時の気持ちを打ち明ける。
西大和学園生が語るIT活用のメリット
こうした不安の声もある中、西大和学園がiPad活用を初めてから早1年がたとうとしている。前編では学校側の話として、iPadをはじめとするITの活用で、情報共有のための作業時間の短縮や効率向上を実現していることを紹介した。一方、生徒はiPad活用にどのようなメリットを感じているのだろうか。
iCT運用委員会で委員長を務める廣河さんは、iPad活用のメリットとして「通学時間を有効に使えること」を挙げる。「生徒は今まで、電車の中でできることが限られていた。iPadがあることで、例えば発表用の資料を作成するなど、電車の中での過ごし方に選択肢が増えた」(廣河さん)。自宅のクライアントPCとiPadとの間でデータを共有するなどして、効率的に作業できることを評価する声もあるという。
「授業の中でプレゼンテーションをする機会が増えた」と説明するのは櫻井さん。新入生相手にiPadを活用して学校や部活動の紹介をするなど、iPadの導入で新しい情報の見せ方や発信方法が取れるようになったという。生徒会・部活動の情報共有や資料作成など、事務作業がいつでもできる環境を整備できることも、iPad導入のメリットだと説明する。
iPadの1人1台環境の効果について山本さんは、「端末が1人1台あることを前提にものごとを進めることができるようになり、生徒同士の連絡や作業が早くなった」と語る。各メンバーの話を基にすると、生徒がiPadなどのタブレット活用のメリットとして感じやすいのは、時間の有効活用や連絡/情報共有の効率化などであることが分かる。
IT活用を進める中で、「従来の課題をITで解決できるのでは」と考えるメンバーも出てきた。委員長の廣河さんは、「放課後の教室の利用状況、空いている教室の情報が瞬時に分かるようになれば」と語る。西大和学園では、放課後の教室は課外活動や補習に利用されていることが多く、委員会をはじめ生徒たちが集まってさまざまな活動をするための教室探しが困難だという。システムで教室の空きをリアルタイムで確認できるようになれば、限られた教室の有効活用につながる。
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