「誰と研究すべきか?」が分かるシステムも開発
事例:Johnson&Johnsonはデータ分析でどう製品検査コストを削っているのか?
Johnson&Johnsonの研究チームは、ナレッジマネジメントシステムのデータを活用して、製品検査に掛かるコスト削減や、共同研究の支援を試みている。
大量のデータを持つ企業にとって、過去の実績の中から意思決定に有効活用できるパターンを掘り起こすのは難しいこともある。データはあっても、それを読み解いて行動の変化に結び付ける時間がない場合もある。
消費者向けの衛生用品を手掛ける米Johnson&Johnson(J&J)の場合、例えば皮膚の刺激試験など、製品の検査に関する何十年分ものデータを持っている。適切なツールと人間の分析力があれば、時間と経費の削減につながる検査についての情報を研究員が掘り起こすことも可能だ。だがまずは、そうしたデータのパターンを見極めて活用できなければならない。
問題がない製法を捨てていた?
ここでは米ソフトウェア企業Wellspringのナレッジマネジメントシステム「Sophia」を例に取る。J&Jの研究員、ラッセル・ウォルターズ氏によると、30年分の製品検査のデータからは、時間と経費の節約につながる情報を発見できるという。同社は発売予定の全製品について刺激試験を実施する。だが何十年分ものデータから、アレルギーシーズンが始まる4月には、被験者の反応が高まることが判明した。同チームは長年の間、アレルギーシーズンに偽陽性反応が出た製法を捨てていた公算が大きいという。
「これについてはコントロールすべきだった。だがわれわれはそのことを知らなかった。そのために恐らく、問題はない製法を捨てていた」とウォルターズ氏は話す。
別のケースとして、J&Jは乳児用シャンプーのために効果実証済みの低刺激製品「No More Tears」の検査法を開発していた。だが、この製品の検査には使われていない別の検査の方が、精度が高いことが分かった。J&Jがそれを突き止めることができたのは、Sophiaにあるデータのおかげだった。
「われわれはこの検査の方が優れていることを証明でき、古い検査法から新しい方法へ切り替えることができた。その検証のためには通常であれば100万ドルの経費が掛かるが、われわれは既にこのデータを持っていた。より精度の高い検査のおかげで、多くの偽陽性を除外せずに済んでいる」(ウォルターズ氏)
ソーシャルネットワークのマッピング
ウォルターズ氏によると、SophiaのおかげでJ&Jは、ソーシャルメディアを経営効率改善のチャンスと見なすこともできるようにもなった。ウォルターズ氏のような研究員は、契約や特許関連の業務および研究論文での協力関係を通じて、他の何百人もの関係者と接触する。しかし、そうした協力関係は1つとして、正式な文書化はされていなかった。
「ダンバー数」理論によれば、われわれが1度に維持できる社会的に実のある関係は150のみ。従って研究者は、自分が持つプロフェッショナルのネットワークをどう活用するかを慎重に考える必要があり、恐らくは、組織内の同僚よりも、社外の関係者との協力関係の方に重点を置く必要がある。
Sophiaのナレッジマネジメントシステムにある、特定の研究者と共同で手掛けた論文の数や、さまざまな研究者と手掛けた特許といったデータを通じて、そうした協力関係を見通すことができるかもしれない。
そこでJ&Jでは、共著論文といった共同作業に関するデータを使い、最も頻度が高く実のある協力関係をSophiaで精密に描き出すための研究員支援プロジェクトに着手したい意向だという。
ウォルターズ氏は「ネットワークは存在しており、可視化は可能だ。組織は、その協力関係ネットワークの在り方を最適化する必要がある」と指摘する。
だが、Sophiaのデータの活用に当たって人的要素が入り込む可能性があることは、ウォルターズ氏も認めている。研究員に透明性を高めさせ、つながりを最適化するために行動を変えることについて考えさせるのは一仕事かもしれない。研究員には、製品開発者としての中心的な役割に重点を置いたソーシャルネットワーキングに価値を見いだしてもらう必要がある。
「そのことが広く認識されているとも、考慮されているとも思えない。研究開発の中核部分が見過ごされているようだ」とウォルターズ氏は話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[スパイスファクトリー株式会社] レガシーに消えるIT予算8割 「刷新か延命か」をAIと人で見極めるための手順 -
製品資料
[JetBrains s.r.o.] ソフトウェア開発は「コーディングエージェント」でどう変わるのか? -
事例
[テクバン株式会社] 太陽ホールディングスは国内外拠点の端末5000台をどう管理しているのか? -
事例
[株式会社キーエンス] PCが苦手でも自動化できる ポポラマーマなど4事例に学ぶ「ナビ搭載型RPA」活用 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
2
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
3
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
4
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
5
PHP2Shellの「事前の情報流出」でパニックに パッチ公開を巡る“混乱劇”
-
6
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
-
7
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
8
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
9
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
-
10
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
3
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
4
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
5
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
6
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
7
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
8
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
9
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー