全社のIT予算のうち、IT部門が管理しているのは32%にすぎない。IT部門以外の部門によるIT予算の執行は何を意味するのか? 「コグニティブコンピューティング」などの話題とともにお届けする。
物理世界と仮想世界を緊密に統合するデジタルビジネスの構築は、競争上の差別化につながると称賛されることが多い。しかし、いずれは、全ての企業がデジタルビジネスを展開するようになり、CIOは、競争優位を実現する新たな方法を見つけなければならなくなる。だが、米IBMの会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)を務めるバージニア・ロメッティ氏によると、CIOにとって、その方向性を見いだすのはそれほど大変ではないという。
では、次の主要な技術トレンドは何か。ロメッティ氏は、コグニティブ(認知)コンピューティングがトレンドになることに賭けている。「コグニティブコンピューティングを担うのは、通常のデータだけでなく、非構造化データ、つまり画像や楽曲、動画をはじめ、どのようなデータでも理解するシステムだ。このシステムにはさらに2つの差別化要素がある。それは推論し、学習することだ」。ロメッティ氏は2015年10月に米国オーランドで開催された「Gartner Symposium/ITxpo」でそう語った(前編:『カールじいさんの空飛ぶ家』は“早く失敗する”文化が生み出した、Pixar社長が語る)。
ロメッティ氏は、「IBM Watson」(同氏はスーパーコンピュータとしてではなく、28のエンジンと50の技術によって構成されているクラウドサービスセットとして説明した)のようなシステムは、リアルタイムに学び、応答できるという点で、分析システムを一歩超えたものだと述べた。コグニティブコンピューティングは、既にヘルスケアや保険、製造といった業種のIBMの顧客やパートナーに影響を与えているという。「われわれは子ども向け玩具メーカーに協力している。このメーカーが作るようになった小さな恐竜のおもちゃは、どの子どもに、どのようにいじられているかに応じて、異なるキャラクターを持つことができる」(ロメッティ氏)
コグニティブシステムは、人間の労働者に取って代わるのではなく、支援を提供する。「どの業種の保有データも年々倍増している。専門家でも対応しきれない状況だ」とロメッティ氏は説明した。
企業でIT部門以外の部門によるIT支出が増えているのは周知の事実だ。だが、そうしたIT支出が全IT支出に占める割合については議論の余地があるようだ。「IT部門は現在、企業のIT支出の58%しか管理していない。この割合は2017年には5割に下がるだろう」。Gartnerのアナリスト、ピーター・ソンダーガード氏はGartner Symposium/ITxpoの基調講演でそう語った。
別のセッションで英PricewaterhouseCoopers(PwC)のチーフテクノロジストを務めるクリス・カラン氏は、IT支出全体のうちIT部門が管理している割合は32%程度にすぎないと述べた。この数字は、同社が最近発表した「Digital IQ」調査に基づいている。世界の企業の経営幹部とIT幹部計2000人が回答したこの調査によると、「IT予算の68%はIT部門以外の部門の予算に含まれている」とカラン氏は説明した。
これらの数字は、基調講演で挙げられた数字とは開きがあるが、両者が示している大きな構図は同じだ。「われわれIT幹部は、もはやIT予算全体を管理していない。ピーターが指摘したように、これはもう管理対象の環境に関わる問題にとどまらなくなっている」とカラン氏は語った。ソンダーガード氏によると、このことは、CIOとほぼ全てのCレベル役員との関係に影響するという。
最高データ責任者(CDO)と最高分析責任者(CAO)はどう違うのか。皆さんは理解するのに苦労していないだろうか。Gartner Symposium/ITxpoでGartnerのアナリスト、デブラ・ローガン氏は、両者を区別する明確な目安を提示した。「CDOは、データの活用と収益化という“攻め”の役割と、データガバナンスおよびデータ品質の確保という“守り”の役割を担う」と同氏は説明した。これに対し、「CAOは、ビジネスにおける分析戦略の定義という“攻め”の役割だけを担う」とした。
だが、この目安に沿ってすっきり区別できなくても、心配には及ばない。ローガン氏は、CDOとCAOという役職は、いずれは1つに統合されると予想しているからだ。「われわれは、この2つの役職は1つになると考えている。CDOがCAOの役割も担い、全体を統括するようになるだろう。つまり、データに関する全てに責任を持つことになる」
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