IT部門は物事のやり方を変えて、変化に伴う混乱を受け入れる必要がある。しかも早急に。さもないと、IT部門の保守的な体質が停滞を招き、データセンターやIT部門自体、そして企業を苦境に追い込む恐れがある。
アルバート・アインシュタイン博士は、「狂気とは、同じことを何度も繰り返し、違う結果を期待することだ」と語ったといわれている。多くのIT部門はまさにこの定義に当てはまる。
厳しい言い方だが、真実とは耳が痛いものだ。IT部門には、変革や新しい方法論、クラウド、コンバージドインフラなどについて、やたらと吹聴する体質がある。IT担当者は『The Phoenix Project』(※)を読んだり、Puppet Labsのインフラ構成自動化ツール「Puppet Enterprise」の試用版をダウンロードしたり、さらには数時間分のパブリッククラウドサービスを購入したりする。彼らは他の人にこう言うだろう。「われわれはアジャイル方法論を駆使してITプロジェクトを管理している」「われわれは構成管理ツールの導入を進めている」「われわれはパブリッククラウドを活用している」
※訳注:邦題は『The DevOps 逆転だ!』(発行:日経BP)。小説を通じてDevOpsが分かりやすく解説されている。
しかし、実はそうではない。IT部門の体質がまん延しているバックエンドでは、IT担当者は、機器の寿命に伴う変革のチャンスを逃し続け、そもそも問題を引き起こした技術や方法論への再投資を繰り返している。例えば、モノリシック型の高価なストレージアレイを購入し、昔ながらのファイバーチャネルSANに接続する。また、Puppetや「Chef」のような先進的な構成管理システムを利用するのではなく、サーバやインフラを手動で構築したり、高度にカスタマイズしたテンプレートを使ったりしている。彼らが人々に、「われわれはクラウドを利用する準備ができている」と言う根拠は、結局のところ、「クラウドはどこか別の場所にあるが、データセンターであることに変わりはないから」というものでしかない。
多くの人はこうした言動に疑問を感じるだろう。私もその1人だった。彼らは同じことを何度も繰り返し、今度こそ違う結果になるかもしれないと期待する。「今度はもっと安く上がるかも」「弾力性が向上するかも」「もっとビジネスニーズにかなうかも」「メンテナンスに必要なスタッフが減るかも」といった具合だ。もちろん、現実はそれらの逆に近い。IT部門の誰かが、物事のやり方を変えるという思い切った決断を下し、動き出さなければ、IT部門の体質は変わらないだろう。だが、リスクや変化を恐れて、誰もが1980年代の技術やプロセスにとらわれ続けている。
では、どうすればIT部門はそこから脱却し、停滞を断ち切ることができるのか。どうすればIT部門は体質を変えられるのか。「手を付けようにも、いつもタイミングが悪い」というのが彼らの言い分だ。いわく、彼らはいつも忙しい。いつも大きなプロジェクトの真っ最中だ。これまでのやり方を変えられない言い訳には事欠かない。しかし、時間を作らなければ、いつまでも何も変わらない。達成すべき目標がなければ、何も前に進まない。このため、目標を設定し、これまでのやり方を変えることを、優先事項にする必要がある。それは、他のプロジェクトはそれほど重要ではないと位置付けることになるかもしれない。だが、いかに重要な建物があっても、腐った土台で支えることはできない。このことを肝に銘じる必要がある。
またIT部門は、組織に染みついた体質や考え方を変える準備ができているスタッフや、変える意思があるスタッフは、ごく少ないことを認めなければならない。IT業務に限らずどんな仕事でも、長く携わるほど、従来のやり方に固執するようになるが、それを自覚するのは難しい。それらのやり方は、高コストで時間もかかるかもしれない。だが、それらにしがみついているスタッフは、1997年に出会った実績ある手法を守り続けているだけだとしても、解雇はされない。であれば、彼らがそうするのは正しいのだろう。ただし、旧弊を温存してくれる勤務先が安値で買収されれば、彼らはレイオフされてしまうだろう。
これまでのやり方を変えるのは混乱の元になる。だが、それを許容し、混乱を受け入れよう。多くの場合、タスクフォースを設置するのが有効だ。この少人数グループには一定の予算を割り当て、要件と期限を課す一方で、自由に新しいものを生み出せるようにする。タスクフォースは、IT部門内の既存組織の活動に制約されることなく、IT部門の外で活動し、IT部門の再構築に取り組む。成果が出たら、タスクフォースはIT部門に再統合される。あるいは、より正確にいえば、タスクフォースの文化、方法、ツールの下で、より正式で混乱のない形で、IT部門がタスクフォースに再統合される。
何も始めていないことを成し遂げることはできない。変革を実現するには、実際に物事を変えなければならない。挑戦してみよう。ハイパーコンバージドインフラを購入する。Puppetでアプリケーションやサービスの展開を開始する。運用しているものの一部をパブリッククラウドに移行する。こうしたことこそが、有意義な変革を起こすことになる。これらは、あなたが友人や同僚に本当に胸を張れることだ。
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