「ThinkPad X1 Tablet」は、構造、パフォーマンス、ユーティリティーのどれもビジネスユーザー向けにぴったりな2-in-1だ。
Lenovoの「ThinkPad X1 Tablet」はMicrosoftの「Surface Pro」に着想を得ているのではないだろうか。どちらも「Windows 10」を搭載したハイエンドタブレットで、キックスタンド、アクティブスタイラスペン、酷似したキーボードが用意されている。
そうでなければ、Lenovoは、Surface Proのデザインを拝借したといえるかもしれない。Microsoftの「Surface Pro 3」が販売されたのがThinkPad X1 Tabletよりも2年近く早いことを考えればあり得る話だ。
どちらにせよ恥じる必要はない。Surface Proシリーズは、2-in-1デバイス市場の頂点に君臨し続けており、最高峰のWindows 10デバイスと称されている。LenovoがSurfaceの美学を参考にしたというのなら、最高のデバイスの特長を取り入れたことに称賛を送りたい。本稿をご覧いただければ、この2機種が同等であることが分かるだろう。
実際のところ、LenovoはSurface Proの完全なコピーを作ったのではなく、その1歩先を行っている。Surface Proの良いところとThinkPadの象徴的な特徴を融合することで、ビジネス寄りの2-in-1デバイスを誕生させたのである。
キーボード装着時のThinkPad X1 Tabletの本体サイズは291×217×13.65ミリ(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.065キロだ。Microsoftの「Surface Pro 4 Type Cover」を装着した「Surface Pro 4」より若干重くて若干厚みがあるにすぎない。造りも非常に頑丈でしっかりした感触がある。素材の大半はマグネシウム合金構造で、小さな傷、汚れ、指紋を適切に防ぐ。また、1〜2回誤って落としたとしても耐えられるだろう。Lenovoによれば、ThinkPad X1 Tabletは、米国国防総省の軍用規格「MIL-STD-810G」に準拠しているとのことだ。
キックスタンドには、ボトムヒンジとキックスタンドを開閉するためのラッチが備わっており、約90度まで広げることができる。購入直後のキックスタンドは非常に固くて頑丈だが、ThinkPad X1 Tabletが製品寿命を迎えるまで、その状態が維持されるかは疑わしい。
本体を立てるという点に関してThinkPad X1 Tabletは安定している。だが、かなり滑りやすい。Surface Pro 4はトップヒンジで、キックスタンドは本体の中央部から広がる形になっている。この構造により、先端がより鋭く食い込んで同じ場所にとどまることができる。これは文字通り膝の上で使用するときに特に当てはまる。一方、ThinkPad X1 Tabletは膝の上で安定性に欠ける。また、ThinkPad X1 Tabletのキックスタンドは約25度まで閉じるとパチンと閉まる。逆に言えば、本体を約155度まで開くキックスタンドは閉じるということだ。
これは重箱の隅をつつくようなもので、そこまでThinkPad X1 Tabletを開くことが役に立つ場面はほとんどない。とはいえ、この価格帯のデバイス全般にいえることだが、そうした細かい点にも不満をいう権利がユーザーにはある。
ThinkPad X1 Tabletには、各種端子が用意されている。本体右側にはMini DisplayPort、フルサイズUSB 3.0、USB Type-C。そして、左側には3.5ミリヘッドフォンジャックとKensingtonセキュリティロックのスロットが配置されている。また、microSDカードスロットがキックスタンドの裏側に隠れるように存在し、キーボードとアクセサリー用のマグネット式のスマートコネクタは本体下部にある。
過去のレビュー記事では、ハイエンドデバイスを製造している他のメーカーが携帯性や薄型設計のために端子の選択肢を犠牲していることについて苦言を呈してきた。ThinkPad X1 Tabletは、バランスの取れたアプローチの方が好ましいことを立証している。Samsung Electronicsの「Galaxy TabPro S」の方が薄型で軽量であるのは紛れもない事実だ。だが、入力端子がUSB Type-Cしか搭載されていないことで生産性が損なわれている。ThinkPad X1 Tabletは、Galaxy TabPro Sよりもはるかに完成度が高い製品になっている。専用の入力端子ではなくUSB Type-C端子で充電できる点を特に高く評価したい。将来性があるのはUSB Type-Cだが、現在広く普及しているのは標準的なUSBだ。ThinkPad X1 Tabletはそのどちらにも対応している。
ThinkPad X1 Tabletは、別売りのマグネット式のキーボードカバーと組み合わせることができる。このアイソレーションキーボードには、約1.58×1.58ミリのキーが83個配置されている。各キーはThinkPadでおなじみの外観で、下辺が丸みを帯びている。押した感触に特筆すべき点はなく、キーストロークは約1.25ミリだ。
快適な入力にはこれくらいのキーストロークが最低限必要だ。この点に関してThinkPad X1 Tabletは、2-in-1デバイスの中でも優秀な部類に入る。キーボードはThinkPad X1 Tabletのディスプレイベゼルの下端にマグネットで装着でき、キーボードに傾斜を付けることが可能。これはSurface Pro 4で好評を博している仕組みだ。このデザインによりキー入力しやすくなるだけではなく、ほとんど感じ取れないような非常に小さな反発力のおかげで各キーの弾力性が若干増している。
最初は、あまり好感を持てないかもしれないが、こうした弾力性が備わっているかどうかで状況は大きく変わってくる。一方、Galaxy TabPro SとAppleの新型「MacBook」はキーボードが平らに広がっているため、弾力性はない。強めに押すとキーを押すたびに底に達する。この弾力性の効果は、長いメールや文章を書いたときに指先が痛くならないことで実感できるだろう。
細かいことだが、消音キーとマイクに表示灯が追加されているのはありがたい。特にビジネスシーンではそうだが、ノートPCのスピーカーが消音になっていることを一目で確認できるのは便利だ。
トラックパッドの大きさは、約9.1ミリ×5.3ミリで、繊細な質感だ。応答性はまずまずだが、3つの隣接するボタンがスペースを占有しているためサイズは小さい。これらのボタンは、ThinkPadの象徴的なキーボードのTrackPointと連動している。もっと大きなタッチパッドの方が好ましいと考える向きもあるだろうが、ThinkPadのTrackPointには非常に熱心なユーザーがいる。TrackPointが廃止されようものなら一騒動が起こりかねない。
12型のIPSディスプレイは10点マルチタッチ対応だ。解像度は2160×1440で、アスペクト比は3:2、画素密度は217ppiとなっている。Appleの12.9型の「iPad Pro」とSurface Pro 4に搭載されているディスプレイの方が画素密度は高く、その値は265ppi前後だ。ただし、その差はディスプレイを隣り合わせに並べてじっくり比較しなければほとんど分からない。
ThinkPad X1 Tabletのディスプレイはどの基準に照らしても卓越している。視野角は広く、最大輝度も高い。その輝度は335nitを計測する。色は正確に再現されるが、白は若干黄色がかっている。またコントラストに十分な深みがあるため、他のデバイスと遜色ないレベルで照明によるグレアを適切に抑えている。
Corningの強化ガラス「Gorilla Glass」が採用されたディスプレイは、一部の競合デバイスに比べるとやや反射しやすい。また、キーボードの右下に搭載されている指紋スキャナーは今回のテストでは正確性を欠く結果となっている。単純に機能しないことが非常に多く、機能した場合でも何度か押さなければならないケースが少なくなかった。同じような不満はMicrosoftの「Type Cover(指紋認証センサー付き)」でも感じた。この領域に関してはMicrosoftとそのハードウェアパートナーによる改善が求められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
AIの進化が加速する「プラットフォームビジネス」とは?
マーケットプレイス構築を支援するMiraklが日本で初のイベントを開催し、新たな成長戦略...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2024年12月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
2024年の消費者購買行動変化 「日本酒」に注目してみると……
2023年と比較して2024年の消費者の購買行動にはどのような変化があったのか。カタリナマ...