トランプ米大統領はH-1Bビザ審査見直しを指示する大統領令に署名した。H-1Bビザ利用企業は次のニュース対象にならないように対策が必要だと専門家は警告する。
H-1Bは専門的知識や特殊技能を持った外国人が米国で就労するための査証(ビザ)であり、年間8万5000件の発給枠がある。2017年1月にこの制度を見直す大統領令草案が報じられたとき、IT業界は震撼(しんかん)した。ドナルド・トランプ米大統領は大統領選当時からH-1Bをやり玉にあげていた。大手ITコンサルティング会社は国内で調達できない人材を平均給与額で外国から採用しているのではなく、低賃金の労働力を輸入して米国の給与水準を低下させている――トランプ大統領は、そう非難する。その結果、米国民の雇用が奪われているというのだ。そのため、新政権発足後はH-1B制度を利用できなくなるのではという憶測が流れていた。
今回、正式な大統領令の内容が明らかになり、H-1B制度を利用しているIT企業はひとまず胸をなで下ろしたかもしれない。H-1B制度の見直しを関連政府機関に指示するにとどまり、実行を伴うものではなかったからだ。「バイ・アメリカン、ハイヤー・アメリカン(米国製品を買い、米国民を雇え)」と題されたこの大統領令で示唆された改革には、政治的レトリックが多く盛り込まれているが、すぐに実施される具体的な変更は見当たらなかった。何かを廃止するという明示的な文言はない。
しかし、H-1Bビザに詳しい専門家は、人材確保にこの制度を利用しているIT企業が今回の大統領令を額面通りに受け取るのは危険だと警告する。
Mayer Brown法律事務所のパートナーで、グローバルモビリティと入国業務部門を担当する主任弁護士のリズ・スターン氏は次のように述べる。「重大な影響を受けることはないと思って油断していると足をすくわれるだろう。新政権が着手した大規模な改革は今後、想像以上に大きな影響を及ぼすことになる」
スターン氏は、今回の大統領令に至るまでの5回の政府発表が同氏のような「関係者」に対する明確なメッセージであり、H-1B制度を変更する意向をはっきりと示すものだという。H-1Bビザは高い学歴と希少な専門技能を持つ人材だけに発給し、米国人労働者の雇用を奪うような給与水準の低い外国人労働者には発給しない。そのことが強調されているというのだ。
それだけではない。3月初めには約1000ドルの追加料金で受けられるH-1Bビザ審査の優先手続きを一時的に停止することを発表した他、H-1Bの不正と乱用を阻止する対策や、IT関連学士号を資格条件とする従来の規定の見直しも発表した。司法省と労働省も同様の方針を表明している。
「旅行者の入国制限のように『厳格な審査』という表現は使わないまでも、ビザの申請や延長の審査が厳格化することは明らかだ」とスターン氏は語った。
スターン氏によると、今回の大統領令とこれまでの発表は今のところ実質的変更を含まないものの重大な意味を持っており、「最終的な法改正に向けた地ならし」だという。
次の会計年度が始まる10月までの間に企業が警戒すべきことは、H-1B制度による人材確保とその賃金に対する政府の監視が強まる可能性だけではないとスターン氏は言う。新政権は「会計年度開始までに法改正への弾みをつける」ため、第2のDisneyのようなストーリーを探そうとするかもしれないという(Disneyとコンサルティング会社CognizantおよびHCLは、共謀して賃金の低い外国人労働者を雇い入れ、米国人従業員を解雇したとしてH-1B規則違反の申し立てで告訴された)。
「企業はこの問題に人事部門より法務部門や行政対応部門で対処すべきであり、次のニュースで取り上げられることのないように対策を考える必要がある」(スターン氏)
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