企業のデジタライゼーション推進では、IaaSだけでなくPaaS活用が鍵を握る。また、適材適所で異なるクラウドサービスを利用する「マルチクラウド」利用には注意点も存在する。
アイ・ティ・アール(以下、ITR)は2017年10月5日、京王プラザホテル(東京・新宿)にて年次イベント「IT Trend 2017」を開催した。毎年1回、ITRのアナリストによるIT業界動向の報告や、ITベンダー各社による最新の製品/サービスの紹介が行われる本イベント。2017年は「デジタライゼーションが誘発するビジネス革新」をテーマに、最新ITを武器にビジネスへ変革をもたらす上で必要となる技術や戦略などについて、さまざまな提言がなされた。本稿ではその中から、ITRプリンシパル・アナリストの甲元宏明氏によるセッション「デジタライゼーションにおけるクラウドの価値」の内容を紹介する。
「ITRでは5年以上前から、クラウドは既存のサーバやアプリケーションの単なる代替手段ではなく、ビジネスのプラットフォームとして捉えるべきだと提言してきた」と述べる甲元氏。実際、企業が消費者の嗜好(しこう)や市場トレンドの変化に迅速に追随し、さまざまなデバイスを活用し、グローバルにサービスを展開していく上で、クラウドはなくてはならないビジネスインフラとなった。
甲元氏は「もはやクラウドの是非を議論する段階は終わった」と断言する。その上で、クラウドのメリットを最大限に引き出すには、企業は従来のオンプレミスでのシステム構築の考え方を、思い切っていったん捨て去る必要があるという。
従来のITアーキテクチャは、システムの性能や可用性をハードウェアに大きく依存してきた。しかしクラウドではユーザーはハードウェアを選ぶことができず、全てをソフトウェアでコントロールすることになる。中には、従来のアーキテクチャとの継続性を重視するあまり、それまで使ってきたハードウェアのアーキテクチャをそのまま再現できるクラウドサービスを選ぶ企業もあるが、これは「クラウド本来のメリットを大きく阻害することになりかねない」(同氏)。
オンプレミスに構築してきた仮想環境を、そのままIaaS(Infrastructure as a Service)に載せられる(あるいは載せられるIaaSを選択すべき)と思い込んでいる企業も多いが、これも甲元氏によれば「この点に固執し過ぎると、やはりIaaS本来のメリットはうまく引き出せない」という。
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