テープバックアップ不要論はいまだに根強いが、一方でテープの進化も着実に続いている。テープをNAS感覚で使えるようにするLTFSによって、“テープNAS”というバックアップ手段も選択肢に入ってきた。
映像制作会社のHat Trick Production(以下、Hat Trick)にとって、クラウドは「あまり使えなかった」。そこで同社はSpectra Logic(以下、Spectra)のLinear Tape File System(LTFS)製品(いわゆる“テープNAS”)で、老朽化した手動テープインフラをリプレースした。
英ロンドンを本拠地とするHat Trickは、一般的なテレビ番組を多いときは(容量にして)35TB制作していて、1年間に制作する総容量は約750TB前後にもなる。同社はこの750TBもの映像ファイルへのアクセス時間を75%短縮。バックアップの所要時間は90%の短縮を実現した。
同社はかつてArchiwareのテープライブラリを運用していたが、ポストプロダクション部門責任者のマシュー・テグ氏によると、この装置はファイル復旧に時間がかかり操作も複雑で面倒だったという。
「ArchiwareはTARベースで、閉鎖的な環境だった。ファイルの読み書きは、その装置本体に直接アクセスしない限り実行できない。複数のカートリッジに分散して書き込むため、特定のファイルだけが欲しい場合でも、テープセット全体が必要だった。かといってロボットアームは付いていなかった」と同氏は説明する。
StorageDNAやXenDataなど、放送業界やエンターテインメント業界に特化したデータ保護製品を評価した結果、Spectraの120TBのNASストレージ「Spectra Verde」をファイル保存時の「着陸地点」として展開した。
この装置は、オンサイト(制作現場)とオフサイト(別拠点)に1つずつ配備したテープライブラリ「Spectra T120」に書き込む。テープライブラリへのインタフェースとしては同じくSpectraの「Black Pearl」を配置している。これはSpectraのテープライブラリへのゲートウェイとして機能し、LTFS規格を使って、データをテープに保存したり、テープからデータを取得したりする。
LTFSはテープ上でファイルシステムに似たファイル記録形式を実現する規格で、データへのアクセス方法はNASの操作とほぼ同じだ。つまりアプリケーションやユーザーは、ドラッグ&ドロップや他の標準的な方法を使ってテープとの間でファイルコピーができる。
「放送業界に特化した製品の中には、魅力的な機能を備えたものもある。例えばカメラのメタデータを保存し、それをサムネイルとして提供するという機能が挙げられる」とテグ氏は語る。「ただし、Spectra製品の重要な点は、そのアーキテクチャの完璧な透明性だ。装置にログインして750TB全体を参照するところまで、全てを単一のWebインタフェースで実行できる。Windowsのエクスプローラーを操作しているのと同じ感覚で使える。ファイルの参照、復元、アクセスを即座に実行できる」
テグ氏によると、バックアップタスクに要する時間は週に8時間程度だが、以前に比べれば格段に短縮されたという。
一方、ファイルの復元もSpectra製品を使えば感覚的には即座に実行できるという。
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