Microsoft 365 Enterpriseを導入すべき企業の条件全ての企業に最適というわけではない

Microsoft 365 Enterpriseには多くのメリットがある。しかし、全ての企業にとって最適というわけではない。Microsoft 365 Enterpriseにピッタリな企業の条件とは何か。

2017年11月14日 08時00分 公開
[Duncan JonesComputer Weekly]

 自社のビジネステクノロジー戦略におけるMicrosoftの役割を見直す上で、同社の「Enterprise Agreement」(EA)の次回更新まで3年も待つことはない。

 「Microsoft 365 Enterprise」(訳注)は、広範な製品スイートのライセンスを取得するシンプルな方法だ。同社は、Microsoft 365 Enterpriseをユーザーが共同作業を行うための新たなプラットフォームにしようとしている。

訳注:旧称「Secure Productive Enterprise」(SPE)。原文は名称変更以前に執筆されたため「SPE」となっていたが、翻訳に際して「Microsoft 365 Enterprise」に改めた。

 Microsoft 365 EnterpriseはMicrosoftの既存の「Enterprise Cloud Suite」を拡張する。Enterprise Cloud Suite自体も、同社の「Enterprise Mobility + Security」(EMS)や「Office 365 Enterprise E3」など、さらに低いレベルのスイートを組み合わせたサービスだ。Microsoft 365 Enterpriseはどちらかといえば、同社が特定製品の導入数増を目指す証拠だと考えられている。同社にとって、こうした製品の重要性は収益への直接的貢献だけにとどまらない。

デジタル化

 Microsoftは、主力製品の「Windows」や「Office」のおかげでほとんどの企業にとって重要なサプライヤーとなっている。だがそれだけではなく、同社の製品ラインアップは企業のデジタル化実現に重要となるさまざまな種類のソフトウェアもサポートする。デジタル化を目指す企業にとっては、Microsoftのクラウドサービスへの移行が重要なステップになる可能性がある

 「Microsoft Intune」や「Azure Active Directory」など、セキュリティとコンプライアンス関連の製品は、同社にとって非常に重要だ。というのも、これらの製品はWindows以外の端末、例えばAppleの「iPad」やGoogleの「Android」スマートフォンなどをMicrosoftのテクノロジーで管理できるためだ。企業内端末におけるWindowsの優位性は失われたかもしれない。だが、EMSの導入により、インフラチームがMicrosoftベースの端末戦略を引き続き導入する状況は確保できる可能性がある。

 デジタル企業は、セキュリティとプライバシーを危険にさらすことなく、顧客の求める場所でサービスを提供しなければならない。この状況が、デバイス管理とクラウドアクセス制御の集約を後押ししている。EMSのコンポーネントがまだ単独では市場のトップに立っていないとしても、EMSにはこのような集約が進んでいる状況が反映されている。

 ボイスメールから「Slack」スタイルのメッセージングまで、全てのメッセージング形式は内部スパムが大量に発生すればその価値が落ちる。Microsoftはユーザーの受信トレイからスパムを排除するため、人工知能(AI)を使用してコラボレーションを根本的に変えようとしている。そのためにはまず、できるだけ多くのユーザーのメッセージとドキュメントを同社のクラウドに移行する必要がある。Microsoftの狙いはMicrosoft 365 Enterpriseを通じてクラウドへの移行を促すことにある。Microsoft 365 Enterpriseは、オンプレミスにレガシーが多い企業が、より簡単にコラボレーションの一部をOffice 365に移行できるようにする。

共同作業の向上

 Office 365のコラボレーションツールを使用すると、ユーザーはサイロ化された状態を脱し、連携して業務を行えるようになる。Microsoftの多様性に富んだ製品群は、チーム内でもチーム間でもより効率的な共同作業を実現する。同社の「OneDrive」「Yammer」「Skype for Business」「Microsoft Teams」といった製品は、コラボレーションの方法と形態を数多くサポートする他、流行遅れではあってもまだ広く利用されている電子メールもサポートする。

 また、「Office Delve」のようなイノベーションはAIの活用を代表するもので、変化をもたらす可能性を秘めている。この製品は、企業のコラボレーション効率を高めることによって業務の高速化、スマート化、安全性向上を後押しする。

 Microsoftは、Office 365、EMS、「Windows 10 Enterprise」をまとめる信頼性と安全性の高い方法として、Microsoft 365 Enterpriseを市場に投入している。このような種類のソフトウェア全てを1つのソースにまとめることは、同社にとっては技術的にも財政的にも適切な考え方だろう。だが、同社は提供するソフトウェアのパッケージ、価格、ライセンスを非常に頻繁に変更しているため、最適な調達戦略は2、3年前とは大きく異なる可能性がある。

メリットの利用

 Microsoft 365 Enterpriseのメリットを得るには、Microsoftへの依存度が増すことに社内に不満がなく、クラウドへの移行の道筋がはっきり定まっていることが条件になる。




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