オンプレミスの人事(HR)業務システムをクラウドに移行したある企業では、テクノロジー部門のスタッフへの影響が懸念されていた。しかし実際に現れた変化は、前向きなものだった。
計測機器、組み込みシステムなどを扱うNational Instruments(ナショナルインスツルメンツ、以下、NI)は、2014年に人事管理システム(HRIS:Human Relation Information System)をオンプレミス環境からクラウド環境に移行した。当初、このシステム移行がHRISを操作、運用する従業員にとって、どんな影響があるか懸念されていた。手短に言えば、次のような結論が出た。人事(HR)業務の運用をクラウドに切り替えたことは、HRIS担当スタッフの人員の削減にはつながらなかった。
その代わりクラウド環境に移行してから、HRISシステムの新たな役割の重要性が高まった。アナリストと技術部門のスタッフが、HR部門で、より大きな役割を果たすようになったのだ。
HRISをクラウド環境に移行させたことで、オンプレミス環境で配置していたHRISコーディング専属担当者は必要なくなった。コーディングを担当してきたスタッフの中には、将来に不安や懸念を抱く者もいたという。そう話すのは、NIでグローバルHRISディレクターを務めるウェンディ・コットレル氏だ。
NIのHRIS部門には現在、ビジネスアナリストとプログラマーアナリストが配置されている。ビジネスアナリストからすると、オンプレミス環境での運用は「ただ業務を継続するために、大変な時間をかけていた」と、コットレル氏は話す。オンプレミス環境でコーディングを担当していたスタッフは、現在プログラマーアナリストとなっている
HRを自動化する施策により、プログラマーアナリストはコードを作成する必要がなくなった。その代わりに、彼らは複数の業務を同時に進めるハイブリッドな役割を担うようになった。ビジネスアナリストでありながら、クラウドに関連するカスタムのシステム統合など技術的な作業もこなしていると、コットレル氏は話す。この変化により、HRISの運用方法も大幅に変わった。このグループは、HR部門に所属しながらIT部門とも連携して、現在は社内でも重要な役割を果たすようになった。以前は「バックオフィス業務の遂行だけが彼らの業務」と、社内ではみられていた。
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