医療機関のあらゆる業務を円滑にする
医療現場の人工知能(AI)活用は、診断支援、遠隔医療、病院経営に「効果あり」
人工知能(AI)関連システムを導入する医療機関が増えている。患者のケアと業務管理の双方に潜在的なメリットがあることを多くの医療従事者が認めつつあるからだ。
人工知能(AI)と機械学習が医療業界の多くの分野に変化をもたらしている。その範囲は、患者応対やサービス、全般的なケア、診断、治療まで多岐にわたる。
医療機関が生み出す膨大な量のデータとパターンを特定し、医師や医療従事者、職員の能力を向上させる、といったように、医療分野でAIアプリケーションを活用するビジネスチャンスは多い。
医師の手となり目となるインテリジェントロボット
ここ数十年、処置室や手術室だけでなく病院へのロボットテクノロジー導入が増えている。ロボットの支援を受ける手術は、外科医に極めて高い正確性、技能、高度な手技の制御能力をもたらし、手術室の機能を向上させる。その結果、精度の高い切開と器具の配置によって、医療ミスや合併症が少なくなる。こうした手術では傷口が小さく、身体へのダメージが少なくなるため、患部周囲の炎症を抑えられ、患者の回復も早くなる。
医用画像と診断の領域でもAIの導入が広がっている。画像認識と機械学習に基づく診断技術を使うことで、AIを実装したシステムはコンピュータ断層撮影(CT)装置やエックス線装置で撮影したさまざまな検査画像の診断を支援することができる。AIを実装したシステムは、体内でがんが形成される初期兆候の発見や、皮膚疾患の診断と特定時の分析精度を向上させる。
このようなインテリジェントシステムにより、細菌の採取など特定の臨床検査の分析に必要な時間を短縮し、治療、投薬、調剤についての提言を可能にする。その結果、病院の医療ミスや診断ミスが減り、運用コストが抑えられ、診断結果が出るまでの時間が短縮される。
さらに機械学習を用いた分析により、疾患パターンの特定や異常の発見が可能になる。これにより、医療機関は積極的なケアと治療を提供できるようになる。例えば、医療機関Cleveland Clinicは、ICU治療中に潜在的なリスクを抱える患者を見極めるため、予測分析を利用している。
Cleveland ClinicはMicrosoftとパートナー契約を結び、ICU患者の経過データを収集している。こうした患者履歴データによって、心不全を防ぐために昇圧薬の投与が必要かどうかを予測する。医師や看護師はこのテクノロジーを利用して、状況が深刻になる前に積極的な治療ができる。
救急救命室のベッドの確保や救急車出動の迅速化、感染や転倒リスクの最小化、医師による管理業務の効率向上、効果的な退院措置に予測分析を利用する病院もある。
遠隔医療に革命をもたらすAI
十分な医療を受けることができていない患者は世界中に多く存在する。例えば居住地域では高度な医療を受けられない、医療機関への確実な移動手段がない、病状が重すぎて移動できない、医療機関に行く時間がない、必要な治療を受ける意欲がないなど、その理由はさまざまだ。
遠隔医療などの仮想的な医療行為が進化すれば、このように慢性的に医療サービスを利用できない患者でも受診しやすくなる。医療用AIアプリケーションは、チャットbotやインテリジェントアシスタントを利用して新しい水準の治療を実現する。チャットbotやインテリジェントアシスタントは患者が24時間いつでも必要なときに利用でき、医学的な質問に迅速に答え、個人の治療に関して応答し、すぐに治療が必要な場合はその地域で対応可能な医師に引き継ぎをする。このようなテクノロジーにより、全体的なケアの質、患者の満足度、治療結果の向上が実現できる。
ウェアラブルデバイスの利用が広がっていることから、個人に特化し、必要に応じた効率的な治療を提供する機能が向上している。このようなテクノロジーは進化を続け、多くの企業がAIのパターンマッチング技術を利用している。こうしたパターンマッチング技術によって、心拍数、日々の運動、睡眠パターン、毎日の食品摂取データから実用的な洞察が得られる。
高品質で膨大な量のデータを、AIのインサイトとパターンマッチング技術で処理させることで、患者の生活習慣および治療の有効性を適切に理解するスキルや、患者ごとに最適な治療方法を提供するスキルを医療従事者が利用できるようになる。
医療機関の運営を改善するAI
医療機関のバックオフィスでは、施設の効率化と医療請求に関する問題を解決する場面でAIと機械学習が大きな効果を発揮している。不正や請求ミスの検出に、AIを実装したシステムが利用されている。これまでの検出作業は医療費請求を手作業で確認していたので、時間がかかり間違いも起きやすいプロセスだった。AIシステムは、全ての請求データを監査/調査してコード(医療機関名や診療行為を識別するための番号)の誤りや異常を検出し、疑わしい経費や虚偽の請求を人間よりも迅速かつ正確に特定できる。
機械学習アルゴリズムは、過去の請求データを学習して、医療期間や請求に関するコードを認識する。このアルゴリズムは、新たな請求が適切に申請されているか確認し、迅速に支払いをし、誤りを減らす。こうして医療機関は機械学習と自然言語処理を使ってワークフローの効率を上げ、コードの正確性を改善して、収益増加の可能性を高めている。
医療機関はAIシステムを使用して、保険金不正請求の検出にも役立てている。これまで不正請求は監査や捜査によって発見されてきた。ただし、これは不正請求が実際に起きた後のことだ。AIシステムは膨大な過去の請求データを分析することで、何が正常かを学習し、より素早く異常を発見できる。この高度な分析機能を用いて、調査員はほぼリアルタイムで不正が疑われる請求書を見つけて警告を出すことができるようになる。
医療従事者および病院、医療保険会社といった医療業界のあらゆる関係者は、医療、診断、治療、顧客サービスにAIアプリケーションを利用することで、治療成果を改善したり、リスクを軽減したり、患者の全体的満足度を高めながら大幅に医療費を削減したりできることを望んでいる。
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