医療機関のITシステムに残るハリケーンの爪痕 災害の影響を最大限に抑えるには治療ができなくなる可能性も

治療に必要なデータの管理をITシステムに頼る医療機関は、自然災害に免疫がない。そのため被災後に復旧を試みるよりも、事前に準備しておくことが重要だ。

2019年03月19日 05時00分 公開
[Reda ChouffaniTechTarget]
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 2018年の9月、猛烈な勢力のハリケーン「フローレンス」が米国ノースカロライナ州、サウスカロライナ州の沿岸に上陸すると予測された。この知らせを受けて、近隣の多くの病院や医療機関は、用意してあった災害復旧(DR)および事業継続計画(BCP)を引っ張り出してくる事態となった。避難訓練を再検討し、その他多くの実施手順については予行練習して、計画を評価した。医療システムも同様だ。大半の医療機関は、ハリケーンがどのような被害をもたらすとしても、その被害を確実に抑えるために、ITシステムの復旧プロセスを再確認した。

 災害の多い地域の医療機関は、ハリケーンの時期は常に、停電や洪水、暴風、倒木が建築物にもたらす損害に備える必要があると認識している。IT部門が事前に講じる対策には、フェイルオーバーやバックアップの実施、IT機器を安全な場所に移動させることが挙げられる。フローレンスが上陸した時、多くの医療機関は、自然災害からの復旧計画を用意しておくことが重要だという認識に至った。このような認識を持たなかった医療機関は現在、患者の治療の再開に当たり大きな障害に直面している。

災害で受ける可能性がある被害とその対策

 2、30年前と比べて、電子カルテをはじめとした電子健康記録(EHR)への依存度は著しく高くなっている。当時は、コンピュータシステムへのアクセスができなくなった場合、紙のカルテが利用できた。現在の医療機関は、データの記録と管理を、EHRシステムに頼っていることが多い。これらの電子カルテシステムを使用しないと、医療従事者は病歴や投薬歴、過去の検査結果などの患者情報を閲覧できない。そのため治療を限定的にしかできなくなる。治療におけるITシステムへの依存度の高さを考慮し、IT部門は自然災害の際中、あるいは直後に確実にシステムを利用できるようにする必要があり、これが極めて重要だ。

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