得られるメリットはコストに見合うか
「マルチクラウドバックアップ」は本当に必須なのか?
バックアップ/リカバリー対策のために複数のクラウドにバックアップすることは、これまでとは異なったメリットをもたらす。ただしデータ保護という別の観点からは、それほど有益ではない可能性もある。
複数ベンダーの製品を組み合わせて利用するマルチベンダーの価値を認識している企業は少なくない。マルチベンダーのアプローチを採用することにより、1つの問題に対して幾つかの異なったアプローチが可能になり、単一ベンダーへの依存状態に由来する問題を回避することもできる。
バックアップベンダーは、複数ベンダーのクラウドの利用が可能なことを強調している。そもそも、こうしたマルチクラウドバックアップは本当に必要であり有益なのだろうか。
この問題について幾つかの観点から考察する。
併せて読みたいお薦め記事
バックアップに関連する課題
- 「リストアできない」と泣きを見ないために、バックアップで失敗しない3つの条件
- バックアップも破壊する「DeOS型攻撃」(サービス破壊型攻撃)とは?
- ランサムウェア最悪の大流行に備えるバックアップと災害復旧(DR)戦略
「うちのバックアップは完璧です」という企業がはまるワナ
バックアップ
例えば「Amazon Web Services」(AWS)と「Microsoft Azure」の両方のクラウドにバックアップするという考えは、いわゆる「3-2-1ルール」(注1)に則している。各クラウドは「2つのメディアに保存する」のうちの1つに該当し、「コピーの1つは遠隔地に保存する」という要件も満たす。複数のクラウドにバックアップする機能を持つバックアップ製品を利用すれば、組織はバックアップ製品のベンダーを1社に絞ることもできる。
※注1 「3つのコピーを保存する」「2つのメディアに保存する」「1つは離れた場所に置く」という、バックアップの考え方をシンプルに表したルール。
リカバリー
マルチクラウド運用の戦略を採用している組織は、特定のクラウドでバックアップとリカバリーをすることで、リカバリー時のコストを最小限に抑えることができる。従って、この観点からはマルチクラウドバックアップの利用には明白な利点がある。
リカバリーの成功率
「マルチクラウドバックアップ戦略を採用すると、リカバリーの成功率を改善できるか」という質問の答えは、ほとんどの組織にとってはノーだ。単一のクラウドを利用するシングルクラウドバックアップからマルチクラウドバックアップへ移行すると、バックアップ戦略とリカバリー戦略の両方が複雑になり過ぎる可能性がある。
可用性
クラウドでも機能停止が発生することがある。サービス品質保証契約(SLA)を締結してもその点は変わらない。そのため、複数ベンダーのクラウドを使用することには幾つかの利点がある。ただしリカバリーの必要が生じた時に、同時にクラウドベンダーで機能停止が発生する可能性は非常に小さい。そのため、この可能性の低い問題を解決するためにマルチクラウドバックアップを使用するのは過剰な対応だ。
マルチクラウドバックアップの将来は
前述の観点を念頭に置くと、マルチクラウドバックアップの将来はどうなるだろうか。
これはニッチなニーズだと考えられる。大企業や中堅企業の中には、バックアップ/リカバリー戦略の一環として複数のクラウドを利用できる機能が必要な場合もある。大多数の組織にとって、この点は大きな関心事ではない。
マルチクラウドバックアップにはそれなりの価値があるが、将来的には、単に複数のクラウドを利用するかどうかではなく、組織のバックアップ戦略に厳密に依存することになると考えられる。いずれはっきりするだろうが、現時点ではマルチクラウドバックアップは一つの選択肢であり、バックアップとリカバリーに必須の要素ではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
4
「制御用組み込みPC」に関するアンケート
-
5
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
6
APIキー奪取から3時間でクラウド掌握 Anthropicが暴いた「バイブハッキング」の現実的な防御策
-
7
「複数AIの野放し」に歯止め Salesforceが6製品統合で挑むAI統制の覇権
-
8
“AIコーディング”でどのツールを選ぶ? 「ChatGPT」「Claude」の真価
-
9
「身代金を支払う」以外のランサムウェア対策は本当にあるのか?
-
10
「定期診断」発想は要注意? いまセキュリティに求められる持続的な対策とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー