低遅延を実現するが利用には制限も
AWSを自社のすぐ近くで動かせる「AWS Local Zones」とは?
AWSのITインフラをユーザー企業の近くに展開できるサービス「AWS Local Zones」が登場した。その用途と利用方法、課題を説明する。
Amazon Web Services(AWS)の「AWS Local Zones」は、同社の同名クラウドサービス群のITインフラを拡張する最新のサービスだ。
AWSは近年、パブリッククラウドのデータセンターだけでは満たすことができない顧客のニーズに応えるために、さまざまなツールやサービスを追加してきた。その例としてAWSサービスをパッケージ化して、自社データセンター内で運用できるようにしたアプライアンス「AWS Outposts」や、ペタバイト(PB)規模のデータを物理的にAWSのITインフラへ移行するためのアプライアンス「AWS Snowball」がある。
フルスケールのAWSリージョン(大規模データセンター群)が近くにないユーザー企業は、Local Zonesの利用でAWSサービスの質を改善できる可能性がある。同サービスを自社の戦略にどのように組み込めるか調べてみよう。
Local Zonesの仕組みと用途
Local Zonesは、ストレージやサーバなどの一部AWSサービスを特定の地域にデプロイ(展開)し、高速なアクセスを可能にするサービスだ。想定顧客は、AWSリージョンから比較的遠く離れた場所に位置していて、かつレイテンシ(遅延時間)を抑える必要があるアプリケーションを使用するユーザー企業だ。
レイテンシを抑える必要があるアプリケーションには、モデルを素早くトレーニングする必要がある機械学習アプリケーションや、広告を高速に配信する必要があるアド(広告)テクノロジーアプリケーションなどが挙げられる。Local Zonesは、ビデオストリーミングやメディア制作、オンラインゲームなどの画像と音声の処理時間を早めることにも役に立つ。
Local Zonesが利用するリージョンは、最も近いAWSリージョンを親にするリージョンであり、論理的には親リージョンの一部でもある。例えばロサンゼルスのLocal Zonesの名称は「us-west-2-lax-1a」で、その親の米国西部(オレゴン)リージョンの名称は「us-west-2」となっている。Local Zonesは親リージョンを反映した命名規則を使用するだけでなく、全てのAPI呼び出しとWebコンソールへのアクセスでも、親リージョンを使用するということだ。
Local Zonesで最初に提供を開始したデータセンターは、ロサンゼルスにある。ロサンゼルスのLocal Zonesは、プライベートネットワーク接続を介して米国西部(オレゴン)リージョンに接続する。インターネットへの接続はインターネットゲートウェイを利用しており、約束されたネットワーク速度を提供する。
この記事の公開時点で、ロサンゼルスのLocal Zonesへのアクセスは招待制となっている。ユーザー企業はLocal Zonesにアクセスしたら、使用中の「Amazon Virtual Private Cloud」(VPC)内に必要なネットワークサブネットを作成し、それを使ってLocal Zonesで「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)インスタンスなどのリソースを起動して利用する。
利用できるサービス
現在、Local Zonesは一部のAWSサービスのみ利用できる。その中には、Amazon EC2の幾つかのインスタンスタイプに加え、「Amazon Elastic Block Store」(EBS)の「汎用SSD」および「プロビジョンドIOPS SSD」ボリュームがある。
他にもAmazon VPCや「Elastic Load Balancing」「Amazon FSx for Windows File Server」「Amazon FSx for Lustre」など、インフラの管理とデプロイ、アクセスに必要なサービスが利用できる。シングルゾーンの「Amazon Relational Database Service」(RDS)も、近いうちに利用できるようになる。
サービス提供の限界とコストに関する懸念
Local Zonesはまだ1つの地域でしか提供されておらず、利用可能なサービスも限られているため、実行できるアプリケーションが限られるのは明らかだ。AWSはインフラやサービスを拡張し続けているが、Local Zonesがあなたの勤務先の近くに開設されるのがいつになるかは分からない。加えてLocal Zonesの対象ではないAWSサービスを利用する場合は、自社のニーズを満たさない可能性がある。
コストにも注意が必要だ。Local Zonesは追加料金なしで有効にできるが、各AWSサービスをLocal Zonesで指定したリージョンで利用する料金は、親リージョンで利用する場合よりも高い傾向がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発特有の課題も解消できる「AI活用」の秘訣とは? -
事例
[株式会社ビザスク] 「新規事業」事例集:大手企業はどのように想定顧客ヒアリングを行っているのか -
市場調査・トレンド
[株式会社ビザスク] 質の高い「仮説検証インタビュー」を実施するためのポイント -
事例
[株式会社ビザスク] 富士フイルムの新領域参入に学ぶ事業創出 「畑違い」でもビジネス化できる方法 -
事例
[株式会社ビザスク] 三菱電機 上席執行役員に学ぶ、未来を切り開く「新事業創出」の実践方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー