ロボットの自律走行を目指す
竹中工務店が建築ロボットの制御を「AWS RoboMaker」で実現へ 効果と課題は
建築現場用ロボットと、その制御システム「建築ロボットプラットフォーム」を開発する竹中工務店。それらの中核要素として採用したのが「AWS RoboMaker」などのAWSサービスだ。選定理由とメリット、課題を整理する。
大手建設会社の竹中工務店は、建築現場で稼働するロボットと、その制御や監視に利用するシステム「建築ロボットプラットフォーム」の開発と運用を進めている。それらの中核要素として採用したのが、ロボットアプリケーションの開発と運用のためのサービス「AWS RoboMaker」(以下、RoboMaker)をはじめとするAmazon Web Services(AWS)のサービス群だ。
「RoboMakerが持つロボットのシミュレーション機能を利用することで、自律走行するロボットの開発が可能になる」と、竹中工務店で建築ロボットプラットフォームの運用を統括する松尾 享氏は話す。ロボットと建築ロボットプラットフォームの実証実験を通じて、RoboMakerの効果と課題が見えてきた段階だ。
RoboMakerは2018年提供開始という比較的新しいサービスであり、竹中工務店も本格導入はこれからという状況だ。ただし現時点でも同社はRoboMakerのメリットや課題を実感しており、同社の取り組みは他の国内企業にとっても参考になると考えられる。本稿は同社の話を基に、RoboMakerをはじめとするAWSサービスを利用したロボット開発と運用の成果・課題を解説する。
併せて読みたいお薦め記事
ロボットに関するトレンド予測
ロボットと働く
建築業界では労働者の減少と高齢化が進んでいることに加え、完全週休2日制という働き方改革の努力目標を設定していることもあり、人手不足の課題解消が急務となっている。この課題を解決するために、竹中工務店は現在、資材の運搬や掃除などの単純な作業をするロボットを建築現場に導入している(写真)。
現行のロボットは主に建築中の建物内で運用されるため、位置情報を把握させることが難しく、あらかじめカラーコーンでマーキングした範囲でしか作業させることができない。加えてロボットの稼働台数の増加と高度化に伴い、管理負荷が増大していることが課題となっていた。
この課題を解決するために採用した手法が、位置情報を活用したロボットの自律走行と、ロボットのバッテリー状態や異常状態の一括管理を可能にする建設ロボットプラットフォームの開発だ。
RoboMakerのシミュレーション機能とBIMを活用
ロボットの自律走行の仕組みには、RoboMakerが備えるロボット動作のシミュレーション機能と「BIM」(Building Information Modeling)を採用した。BIMとは、コンピュータで建築物の3D(3次元)モデルを扱う仕組みのことだ。このBIMのデータを利用し、ロボットの走行ルートをRoboMakerのシミュレーション機能を使って指定する。
光センサー技術の「LiDAR」(Light Detection and Ranging)を使ってロボットが取得する実際の位置情報と、あらかじめ指定したルートを重ね合わせることで、ロボットは自らの位置を把握し、自律走行できるようになる。これにより現場の作業者が手作業でルートを指定したり、マーキングをしたりする必要がなくなる。
RoboMakerを選んだ3つの理由
建設ロボットプラットフォームの中核的な機能を担うRoboMakerはロボット用アプリケーションの開発環境とシミュレーションツール、ロボットの監視ツールなどを備える。建設ロボットプラットフォームは走行ルートのシミュレーション以外に、ロボットの状態の監視にもRoboMakerを使っている。竹中工務店はこうしたシミュレーションやロボットの監視をRoboMakerの管理コンソールで実施している。
RoboMakerを建設ロボットプラットフォームの中心的な機能の開発と運用に採用した理由について、開発を担当したブレインズテクノロジーのCTO(最高技術責任者)を務める中澤宣貴氏は下記の点を挙げる。
- ロボットと建設ロボットプラットフォームの開発・運用管理に必要な機能を備えている
- AWSの他のサービスとの連携が容易で、機能拡張がしやすい
- ロボットアプリケーションの開発ツール「Robot Operating System」(ROS)のようなオープンソースの技術を組み合わせた開発ができる
建設ロボットプラットフォームはRoboMaker以外にも、複数のAWSのサービスを利用している。ロボット操作や管理用の操作画面には、コンテナを稼働させる仮想マシンのマネージドサービス「AWS Fargate」を採用。ロボットが収集したデータの取得やロボットへのコマンド送信には、IoT(モノのインターネット)デバイスを管理するためのサービス群「AWS IoT」を利用している。ロボットにはAWSの機能をデバイス側で実行するためのソフトウェア「AWS IoT Greengrass」を組み込み、建設ロボットプラットフォームと連携させている。
自律走行ロボットの実証実験の結果は
ロボットや建設ロボットプラットフォームは、前述の通り実証実験の最中だ。竹中工務店の執務室内でロボットの自律走行の精度をテストした結果、人の往来や障害物を避けながら、事前に設定したルートを走ることに成功した。
RoboMakerの利用に当たっては課題もある。ロボットが走行する際に送受信する位置情報などのデータ量が大きく、ロボットの動作が止まることがあった。AWSリソースの拡張によってこの問題は解消できたものの、建築現場で実運用する場合は、さらに広い面積で稼働させることが想定される。
竹中工務店で建築ロボットプラットフォームの実証実験を担当した三船 浩太郎氏は、通信データの大きさに対処するために「コストや運用負荷の観点で、リソースの拡張以外の解決策を探す必要が生じる可能性がある」と話す。AWSのようなパブリッククラウドを利用するメリットの一つに、システムを一から構築する必要がなくなることが挙げられる。ロボット開発の分野でも、開発を迅速化したり、かかるコストを抑えたりするために、パブリッククラウドの導入が進む可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
6
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
7
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
8
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
9
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
10
DXを阻む「動くだけ」のレガシーシステムに決別するための生成AI活用術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー