新型コロナとデータ分析【後編】
「新型コロナでのデータ分析ツール無料化は無意味」と考える専門家の言い分
世界的な被害をもたらしている新型コロナウイルス感染症に対抗するため、さまざまなデータ分析ツールベンダーが分析に役立つツールやデータを提供している。こうした取り組みに懐疑的な専門家もいる。それはなぜか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、状況を把握するための支援策として、さまざまな分析ツールベンダーがデータ分析に役立つリソースを提供している。前編「新型コロナでTableau、SAS、Qlikが無料提供したデータ分析ツールとは?」はTableau Software、SAS Institute、Qlik Technologiesの取り組みを紹介した。
他にもログ分析ツールベンダーSplunkは、インストール不要の分析ダッシュボードを公開している。Google傘下でデータ分析モデルのコンペティションサイトを運営するKaggleは、情報提供用のWebページを作成した。グラフデータベースベンダーのTigerGraphは、新型コロナウイルス感染症に対抗する企業向けに自社サービスを無償提供している。
このような分析ツールベンダーによる取り組みにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の拡大を実際に遅らせ、阻止する上でこうしたベンダーが果たす役割について、アナリストは懐疑的だ。
専門家による“納得”の言い分
分析ツールベンダーは情報の見せ方を洗練させることはできる。だが「既に起きたことを伝える」という、過去に注目したデータ可視化の性質を考えると、「まだ協力関係にない企業のために、データ分析ベンダーが詳細な予測モデルを利用して提供できる情報は限定的だ」と指摘するのは、調査会社Ventana Researchでアナリストを務めるデイビッド・メニンガー氏だ。
分析ツールベンダーができることは「非専門家の人にデータを提供し、幅広い人に情報を与える程度のことだ」とメニンガー氏は言い切る。これにより研究者が新たなデータに出会える可能性はあるものの「研究者は分析に必要なツールを既にそろえている」というのが同氏の見方だ。
調査会社Constellation Researchでプリンシパルアナリストを務めるダグ・ヘンシェン氏も同様の意見を示す。「新型コロナウイルス感染症の拡大を遅らせたり食い止めたりするには、既に起きたことを示す可視化よりも、今後を予測する技術の方が必要だ」とヘンシェン氏は語る。
一方でヘンシェン氏は、データ分析ベンダーが先進的役割を果たせる領域にも言及する。それは、新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を企業が把握できるよう支援することだ。例えば財務計画を管理する「EPM」(企業業績管理:エンタープライズパフォーマンス管理)ツールが、今後数週間で起こり得る深刻な収入減を切り抜けようとする企業の支援に重要な役割を果たす可能性がある。
こうしたシステムに代わる手段として「常に利用されてきた」とヘンシェン氏が表現するのが、サイロ(特定部門や業務での利用に特化し、データを連携しづらい状態)化したスプレッドシートや、メールによる無秩序かつ面倒な共同作業だ。こうした手法ではデータ入力ミスやバージョン管理の地獄を招くことは避けられず、時間も手間もかかる。「四半期あるいは年に1回の実施だとしても、企業は『できるならこのアプローチは避けたい』と考えるだろう」(同氏)
データ分析ベンダーが現在の世界的大流行にどれほどの影響を与えられるかは分からない。だがこれらのベンダーの取り組みによって、将来起こり得る感染症拡大に対する世界の対処方法が変わる可能性があることは確かだ。分析のために収集してモデル化したデータは、企業や政府がその教訓を生かし、より適切な備えをするために役立つだろう。「新型コロナウイルス感染症の流行が終息したら、この騒動から学び、それを基にしたより良い取り組みがなされることを願う」。Qlikの慈善部門Qlik.orgでエグゼクティブディレクターを務めるジュリー・ケイ氏はそう語る。
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