エンティティーの関係性に着目して管理・分析可能にするグラフデータベース。この技術が人事管理分野で注目されているという。
人事に関する世界的なインフルエンサーであるジョシュ・バーシン氏は、人間を中心とする人事の新たな基盤としてグラフデータベースに可能性を見いだしている。この根拠はどこにあるのか。
人事技術に関するバーシン氏の最新の寸評によると、人事専門職の中で最も急成長している分野としてピープルアナリティクス(People Analytics)を挙げており、4分の1の企業がこの役割を導入しているという。
ピープルアナリティクスとは、人事データベースを作成することを意味する。ただし、このデータベースは単なる組織図ではなく実際の日々の関係と役割を反映する。バーシン氏がこのデータベースを実現するための有望な方法としているのがグラフデータベースだ。
グラフデータベースは、エンティティー間の複雑なネットワークとその相互関係を効率的にモデル化する。そのため、従業員の関係性を理解するのにグラフデータベースを利用することが増えている。いずれにせよ、明確な構造が必要だ。明確な構造がなければ上司への報告、承認、役割の割り当てを管理することはできない。その結果、構造の変化や人事異動のために複雑な組織図の概略や柔軟な枠組みを用意することになる。
バーシン氏は、役割とプロジェクトを重視する組織が増えていると言う。そのため、役職、レベル、経験だけでなく、その人のビジネス能力に目を向ける必要が生まれている。その結果として、従業員、部門、プログラム、場所、スキル、キャリアパスについての複雑なデータを根掘り葉掘り探る必要がある。
NASAがグラフデータベースを採用しているところに、こうしたトレンドが完璧に示されている。NASAのデービッド・メザ氏(ピープルアナリティクスの臨時支部長、シニアデータサイエンティスト)は次のように説明する。「NASAは月に戻り、火星にも到達しようとしている。以前月に行くために使ったスキルを再活用するだけでなく、新たなスキルにも着目して新しいプログラム、プロジェクト、技術を検討する必要がある。そのためにはNASAの職員をしっかりと理解する必要がある」
NASAは、急速に変化する職務や仕事の役割に対応するためにスキル分析システムを構築している。NASAはコアスキル、隣接スキル、職務横断的なスキル、トレーニング認定資格、教育資格、キャリアパス情報を網羅する人事サポートツールを必要としていた。それだけではない。そうしたスキルを持つ人材の地理的な居場所、従事しているプログラムやプロジェクトも把握する必要があった。NASAのプロジェクトマネジャーは、プロジェクトの戦略目標を達成するため、後継者育成や戦略的連携モデルにリアルタイムに貢献できるようになっている。
グラフ技術ベースのピープルアナリティクスシステムを採用している組織には、自動車メーカーのDaimlerとベルギーのフランデレン(訳注)の公共雇用サービスVDABがある。Daimlerは複数の場所に散在する25万人の従業員と技術分野が異なる世界中のチームを活用するため、日程調整や時間のスケジューリングが課題になることがある。そのため、管理職は休暇、臨時職員、パートナーやサービスプロバイダーの人材を調整できる必要がある。
訳注:本来のフランデレン(フランダース)は現オランダ、ベルギー、フランスにまたがる旧フランドル伯領を指すが、本稿のフランデレンはベルギー北部でオランダ語を公用語とするフランデレン地域のこと。ベルギーは連邦制であり、フランデレン地域にはフランデレン地域政府がある。
Daimlerは複雑な人員構造への洞察を得てこの課題に対応するため、グラフ技術ベースの人事プラットフォームを構築した。
VDABは求職者をサポートするため、グラフ技術ベースの検索を可能にしている。グラフ分析は市民のスキルや専門知識に関する便利なガイダンスを提供し、応募する市民のスキルセットと求人を対応付ける。このグラフ技術ベースシステムの次期リリースでは、スキルギャップを特定して推奨トレーニングを提示する予定だ。
グラフデータベースは関係性を管理するものだ。そのため人事とグラフデータベースには明確な相乗効果がある。
エイミー・ホルダーはNeo4jの分析およびAIプログラムのディレクター。
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