Citrixのテレワーク事例【後編】
新型コロナウイルス対策の在宅勤務でCitrixが技術より「人」を重視する理由
Citrix Systemsは新型コロナウイルス感染症の対策として中国全土の従業員をテレワーク体制に移行させた。同社は2カ月以上にわたる経験から、問題解決には「技術よりも人が重要だ」と考えている。それはなぜか。
中国では2020年1月ごろから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の爆発的感染が発生した。この状況を受け、あらゆる企業は「(在宅勤務などの)テレワークはぜいたく品でなく必需品だ」ということを思い知らされることになった。
仮想化ベンダーのCitrix Systems(以下、Citrix)は、中国の南京と日本の東京に約100人の技術サポートスタッフを抱えている。同社ワールドワイド技術サポート部門のディレクターを務めるジェームス・シン氏は、新年の休暇で中国全土に散らばっていた従業員に連絡を取り、状況を確認し、テレワーク計画を実行に移していった。
前編「中国全土の従業員をテレワークに移行させたCitrix、実現のために何をしたのか?」に続く後編となる本稿は、シン氏がテレワーク戦略を導入する中でどのような課題に直面し、どのように克服したのかを詳しく紹介する。同氏が重視した方法の一つは、技術ではなく人に重点を置いたことだという。
―― テレワークに必要なインターネットを全員が利用できるわけではないという話でしたが、そうした課題や、その他の技術に関する課題にはどのように対処しましたか。
シン氏 インターネットを利用できない従業員には、少なくとも今いる省の他の場所に移り住むことができるかどうかを尋ね、その従業員がインターネットを利用できる場所にたどり着けたかどうかを確認した。それで少し楽になった。
分かったことがもう一つある。当社のエンジニアやマネジャーは全員、社内でデュアルディスプレイを使っていた。そうした環境を自宅にまだ用意していない従業員が一部存在していた。そこでIT部門と連携して、デュアルディスプレイを用意していない従業員には、オフィスから追加のディスプレイを発送すると伝えた。この連絡は難しくなかったが、物流の問題があった。当時は郵送に制限が設けられていた。こうした普段なら考えられないようなことが起きるのだ。
在宅勤務では「人」に目を向けることが重要
―― 在宅勤務に必要な知識を全員に対してどのように習得させましたか。
シン氏 当社のチームはいつも共同作業をしている。エンジニアのグループ全員が一丸となって顧客の問題の解決に取り組むことは珍しくない。課題だったのは、その全員が中国全土に散らばっていても、そうした協力体制を維持できるようにすることだ。
われわれは従業員に、在宅勤務ならではの働き方を理解してもらわなければならなかった。デスクに向かってPCの電源を入れ、仕事をするだけ、という単純なことのように思うかもしれないが、現実はそれほど簡単ではない。小さな子どもがいる場合もあれば、大家族の場合もある。デスクがなく、リビングルームで仕事をする場合もある。どのような場合でも在宅勤務を遂行できる方法についてのトレーニングを従業員に提供しなければならなかった。
これには心理的な側面もある。従業員は4週間、5週間、6週間と在宅勤務をしている。2020年1月末ごろから(本記事公開時点の3月初旬で)約2カ月半が経過した。トレーニング、ガイダンス、コーチングを提供して、効果的に在宅勤務する方法を理解してもらうことが重要だった。
Slack Technologiesのビジネスチャットサービス「Slack」を導入し、チーム全員で話し合いをするためのSlackチャンネルを用意した。エンジニアやマネジャーのほとんどがそれを設定している。中国ではWhatsAppのメッセージングアプリケーション「WhatsApp Messenger」は使えない。代わりにTencentの「WeChat」を導入した。
―― 今回の体験で最も困難だった部分は何でしょうか。
シン氏 挙げるとすれば「人」だ。従業員同士が関わり合い、コミュニケーションが自由に流れるようにするのが難しかった。
その点はかなり改善している。最初に届いたフィードバックの多くは、「ストレスがたまる」「出社できず、ただ閉じ込められている」「刑務所に入れられているような気分だ」といったものだった。
そこで毎日、音声通話をする手はずを整え、マネジャーからエンジニアに連絡を取って、単に日常的なことについて会話をするようにした。必ずしも仕事に関する話をする必要はない。むしろ家族のことや、何であっても構わない。
普段のように日常会話をするだけで大きな助けになった。適切なレベルのコミュニケーションが取れるようにするためには、管理職が非常に重要な役割を果たすと考えている。
全ての企業にとっては、ある程度の計画を整備することが重要だ。当チームは計画を可能にするツールを導入済みだったという意味では幸運だった。実際に迅速に取り組んでいる。肝心なのは人だ。私は頭の片隅で常に意識している。特に強く意識する必要があるだろう。
―― 今回の教訓を他の場所でどのように生かしますか。
シン氏 当社は今回の取り組みを世界レベルに広げることを検討し始めている。米国、コスタリカ、インド、バンガロールの他チームでも在宅勤務の取り組みに着手しつつある。各チームの接続状況を確認し、計画を整備して、インフラをテストしているところだ。クラウドサービスへのアクセス環境も用意している。
私自身も多くの仕事を抱えるようになった。経営陣から「中国と日本でこうしたことが可能なら、別の場所でも同じようにできるだろう」と言われている。それこそがわれわれのチームでやっていることだ。全世界の従業員が、どこからでもリモートで仕事ができるようにしている。
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