医療機関を狙うランサムウェアの脅威と対策【前編】
病院がコロナ対策の次に「ランサムウェア」対策を真剣に考えるべき理由
米国連邦政府の各機関は、今後ランサムウェア攻撃が急増する懸念があると、医療機関のCIOに警鐘を鳴らしている。サイバーセキュリティ専門家が予想する脅威とは。
2020年10月下旬、米連邦捜査局(FBI)、米保健社会福祉省(HHS)、米国土安全保障省(DHS)の国家保護・プログラム総局(CISA)は、サイバー犯罪脅威の増加と差し迫った危険性を医療機関に警告するサイバーセキュリティ勧告を共同で発表した。この勧告は医療機関の最高情報責任者(CIO)に厳戒態勢を求めるだけでなく、戦闘準備を命じるような内容になっている。
新型コロナの次に対処すべき危機
これらの連邦政府機関は確かな情報に基づいて、身代金要求型マルウェア(ランサムウェア)の攻撃が急増する危険が差し迫っていることを示唆している。400カ所以上の医療機関がランサムウェア攻撃の標的になる恐れがあり、その攻撃は既に始まっているという臆測も飛び交っている。サイバーセキュリティ勧告の発表後、オレゴン州にあるSky Lakes Medical Centerやニューヨーク州にあるSt. Lawrence Health Systemが運営する医療機関がランサムウェア攻撃を受けたと報告している。ただし、これらの被害報告とサイバーセキュリティ勧告の関連性は定かではない。
いま医療機関が直面する一連の難局に、ランサムウェアの脅威という要素が新たに加わったことになる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は依然として大混乱を引き起こしている。医療機関は日常業務を抱えながら、限られた予算で新しい技術を導入し、COVID-19に立ち向かい続けている。
「このサイバーセキュリティ勧告は、個人用防護具(PPE)、マスク、人工呼吸器の不足に対処したのと同じように、医療機関が次に対処すべき危機がマルウェア攻撃であることを伝えるスローガンだと捉えるのが妥当だろう」。医療業界向けサイバーセキュリティ企業CynergisTekで代表取締役兼CEOを務めるケイレブ・バーロウ氏はこう語る。現在、当社は米国の医療機関のサイバーセキュリティ体制を支援しなければならないという問題に直面している。「この問題には今すぐ取り組む必要がある」(バーロウ氏)
医療機関はランサムウェアにこう襲われる
医療機関に向けたサイバーセキュリティ勧告の忠告によると、ランサムウェアによる攻撃を仕掛けようとするサイバー犯罪者はまず、マルウェアの「TrickBot」と「BazarLoader」を使用して医療ネットワークにアクセスしているという。マルウェアは一般的に、フィッシングメールやソーシャルエンジニアリングによって拡散される。そのため従業員がメール内のリンクをクリックしたり、添付ファイルをダウンロードしたりすると、その従業員のPCがマルウェアに感染する可能性がある。
サイバー犯罪者は医療ネットワークにアクセスできるようになると、システムにアクセスして、管理者権限を備える資格情報の入手を試みる。そうなるとシステムのデータを暗号化によってロックする「Ryuk」などのランサムウェアが持ち込まれるのは時間の問題だ。
フィッシングメールは精巧で、知り合いや社内から送られてきた信頼できるメールのように見える。「中には会社のロゴがあしらわれているものさえある」とバーロウ氏は指摘する。
「連邦政府機関からの信頼できる情報に加えて、Ryukの進化がサイバーセキュリティ勧告を発表するきっかけになっている」と語るのは、医療業界向けサイバーセキュリティ企業Fortified Health SecurityでCEOを務めるダン・L・ダドソン氏だ。「以前、Ryukの感染力は弱く感染速度もゆっくりだった」とダドソン氏は指摘する。そのため医療機関はRyukを突き止めて隔離し、システムに被害が及ぶ前に修復を図ることができた。だが現在、Ryukは「医療機関に侵入して5時間もあればデータを差し押さえて身代金(ランサム)を要求できる」と同氏は語る。「医療機関のCIOがRyukによる攻撃を抑止できる可能性はないに等しい」(同)
中編は、医療機関のCIOが直ちに実施すべきランサムウェア対策を解説する。
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