「データ分析」をボート競技に生かす【後編】
コロナ禍で全大会白紙 英国ボート競技チームは「データ活用」でどう対処したか
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年には主要なボート競技が相次いで中止・延期となった。こうした中、英国ボート競技チームはデータを活用した選手のトレーニング方法を生み出し、実践した。その中身とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中に、英国のボート競技チームがトレーニングと選手選考の両面で実施したこと(詳細は前編「英国ボート競技チームが『SAS』と『エルゴ』で実現した“勘と経験”からの脱却」を参照)の成果は、イタリアのバレーゼで2021年4月に開催された「2021 European Rowing Championships」(2021年欧州ローイング選手権)で現れた。チームメンバーが1年以上顔を合わせていなかった英国ボート競技チームが、メダル数で1位になったのだ。
コロナ禍で生み出した「データ活用型トレーニング法」とは
22チームが参加する中、英国ボート競技チームはメダル総数が10個で1位、金メダル数が3個でイタリアと同数の1位だった。障害者ボート競技の「パラローイング」を含めると、金メダルは5個でメダル総数は12個だった。2018年に英国で開催された際は、メダル総数がわずか4個で、金メダルがゼロだった。「全ての選手が実力を発揮してくれた。20カ月ぶりのレースで、上々のレース再開になった」と、同チームのパフォーマンス担当ディレクター、ブレンダン・パーセル氏は述べる。
全ての選手に屋内向けローイング(ボートこぎ)マシンの「ローイングエルゴメーター」(以下、エルゴ)を提供したこと以外に、コーチ陣がデータを活用して下した大きな判断の一つは、トレーニングスケジュールの変更だ。2020年3月、「2020年東京オリンピック競技大会」(以下、東京五輪)の開催延期が決定した。この時点で既に、新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、スポーツイベントは月単位の延期か完全な中止を余儀なくされることが明らかだった。
ボート競技の選手のトレーニングは通常、競技会がない冬季と、競技会がある夏季で異なる。「生理学的に最も実力が伸びるのは冬季のトレーニングだ」とパーセル氏は言う。選手は夏季のトレーニングではバランスを重視し、オーバートレーニングで燃え尽きることなく主要大会にピークを合わせることを目指す。2020年の競技会が全て中止になると、英国ボート競技チームは2020年の夏に冬季用のトレーニングプログラムを追加で実施し、「生理学的な伸びの可能性」(同氏)を最大限追求することにした。
パーセル氏は英国ボート競技チームを「生理機能をまだ伸ばしている段階の若い選手団だ」と評する。そのため伸びを加速させるために冬季用のトレーニングプログラムを追加で実施し、その上で冬にも冬季用のトレーニングプログラムを消化したという。「データがあったので、一人一人に合ったトレーニングをタイミングよく実施できていることを確認できた」と同氏は説明する。
2021年欧州ローイング選手権の終了後、英国ボート競技チームは実力発揮のピークを東京五輪の開幕に合わせることを目指した。パンデミック中のトレーニングや選手選考と同様、SASのデータ分析ツールはこれからも大きな役割を果たすと考えられる。同チームはデータを活用し、疲れ果てて燃え尽きるところまで選手を追い込むことなく、実力を向上させられるようトレーニングしている。
パーセル氏によると、英国ボート競技チームは2021年欧州ローイング選手権に実施した選手の実力予測を全て見返し、実際のデータと照合。それを駆使して、東京五輪までの過ごし方を計画した。
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