Web会議の依存度が高まるほどWeb会議疲れが生じやすくなる。この当たり前の問題を解決するためにも、多種多様なコミュニケーション手段を用意し、それぞれの長所短所を理解して使い分ける必要がある。
Slack TechnologiesとAsanaはそれぞれ、2021年6月に新しいメッセージング機能を発表した。従業員がメッセージを登録し、同僚がオンデマンドで見ることができるというものだ。同僚はいつでもメッセージを参照できるようになり「リアルタイムにコミュニケーションを取らなければ」というプレッシャーから解放される。
「われわれが会議を開くのは、気持ちを伝えたり、参考資料を示したり、段階を踏んで物事を説明したりしたいからだ。だがリアルタイムで受け止めてもらわなくても、こうしたことはできる」。Asanaの最高製品責任者を務めるアレックス・フッド氏はそう語る。
従業員と雇用主がテレワークの在り方を調整していく中で、「Web会議疲れ」の解消は徐々に進むと考えられる。状況に応じた適切なコミュニケーションツールを使い分けられるようになれば、Web会議ツールばかりを使うことはなくなる可能性がある。前編「Zoomも『Web会議疲れ』を問題視 “あの機能”がストレス軽減に役立つ?」に続く後編となる本稿は、コミュニケーション手段の使い分けによってストレス軽減を図ることの可能性を取り上げる。
Greater Good Science Center(GGSC)の研究によると、Web会議疲れの問題への対処がなされなければ、Web会議は従業員にとって対面会議よりも負担になる。GGSCはカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の校外研究機関で、社会的および精神的な幸福に関する研究を実施している。「顔を合わせてざっくばらんにやりとりするのと比べて、Web会議は時間とともにストレスがたまる」と、GGSCのサイエンスディレクターであるエミリアナ・サイモントーマス氏は語る。
時にはメールや電話の方が、同僚とコミュニケーションを取るのに適していることもある。サイモントーマス氏は「企業はWeb会議を、ブレーンストーミングのようなリアルタイムコラボレーションや、感情的なやりとりのためのツールと位置付けるかもしれない」と語る。例えば対立の解決や、理解の促進といった感情的なやりとりが必要な場面では、身ぶりやしぐさ、顔の表情による表現が役立つ傾向があるからだ。
Microsoft傘下のGitHubは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の前から従業員の70%以上がテレワークをしていた。つまりGitHubは10年以上にわたって、オフィス以外の場所で働く従業員とのコミュニケーションを管理してきた経験がある。GitHubのワークプレースエクスペリエンス担当シニアディレクターを務めるララ・オーウェン氏は次のように語る。「Web会議は、さまざまなコミュニケーション方法の一つにすぎない。このことを念頭に置くことが極めて重要だ」
「どのコミュニケーション方法も完璧ではない」とオーウェン氏は語る。メール、テキストメッセージ、電話、それぞれに固有の長所と短所がある。文字によるコミュニケーションでは、ニュアンスや文脈が失われやすく、それが誤解につながる場合もある。だが電話では、口調が理解のヒントになったり、話をそらしたり、ユーモアを表現したりする。それらは「チームメンバー間の信頼や親密な関係の構築に貢献するだけでなく、コミュニケーションをする上での示唆に富む文脈を与えてくれる」とオーウェン氏は語る。
さまざまなコミュニケーション手段を柔軟に使い分けることが、GitHubの従業員が日々の生活と仕事を調和させるのに役立っていると、オーウェン氏は説明する。「賢明なリーダーは、柔軟な仕事環境を提供することの長期的な価値を受け入れている。そうしたリーダーがいる企業は成功するだろう」(同氏)
技術だけでWeb会議疲れを解消することはできないが、適切な技術があれば疲弊を軽減する役割を果たす可能性はある。ウェルネス(健康増進)機能の真価は、従業員に時間への意識を高めるよう促したり、会議と会議の間に休憩を取るといった施策を提案したりしてくれることにある。「問題に気付き、それを掘り下げて、より良い在り方をデザインして形にするのは、非常に価値あることだ」とサイモントーマス氏は語る。
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