Microsoftが「Windows 11」にしたかった理由は理解できる。だがユーザー視点ではどうか。
Microsoftが「Windows 10」をアップデートする必要があると考えた理由は理解できる。Appleが「macOS」のハードウェアをIntelの「x86」からArmベースの「M1」に切り替えた結果、「Boot Camp」が使えなくなった。Boot CampはMacでWindowsを実行するためのデュアルブートオプションを提供するソフトウェアだ(訳注)。
訳注:Boot CampはIntel Mac(IntelのCPUを搭載したMac)が前提で、M1には対応していない。
Microsoftは恐らく何かしなければと感じ、大きな動きを見せたのだろう。いずれにせよ、Windows 10がリリースされたのは6年前だ。
Appleが自社のハードウェアとソフトウェアを重視するのに対し、MicrosoftはWindowsのオープン性を高める努力をしている。オープンソースデベロッパーズカンファレンスのこれまでの経緯を見ると、Appleのハードウェアはソフトウェア開発者にとって好ましいプラットフォームだ。macOSとBSD系のUNIXは共通点が多く(訳注)、これが開発者を引き付けているのかもしれない。
訳注:macOSは4.3BSDに由来するMachカーネルをベースに、ユーザーランドにもBSD系UNIXのコードが使われている。
ソフトウェア開発者をmacOSから引き離そうと、Microsoftはオープンソース技術の採用を着実に増やしている。GitHubを買収した。Windows 10用の「UNIX」シェルやWSL(Windows Subsystem for Linux)を用意し、開発者がWindowsでGNUやLinuxの環境を直接実行できるようにもしている。そこでは、何も変更せず、ほとんどのコマンドラインツール、ユーティリティー、アプリケーションを実行できる。
こうしたオープン性の哲学は「Windows 11」でもさらに進められる。MicrosoftのCEOサトヤ・ナデラ氏はWindows 11を紹介するコメントの中で次のように述べている。「パーソナルコンピューティングには選択肢が必要だ。真の選択肢を提供するため、障壁を取り除きたいと考えている」
Windows 10は既にArmをサポートしている。Windows 11では「Android」アプリを実行できるようになる。それが「Amazonアプリストア」で入手したアプリでも構わない。
ナデラ氏は、インターネット用の次世代プラットフォームを構築する開発者を視野に入れ、Windows 11を開発者用プラットフォームと位置付けている。つまり、Microsoftはよりオープンな企業になる方向へ進みだす。ナデラ氏は、Windowsを開発者がやりたいことを制限しないプラットフォームにすることを目指している。
例えば、開発者が独自のEコマースプラットフォームを「Microsoft Store」にプラグインできるようにしている。これにより、開発者は収入をMicrosoftと分け合う必要がなくなる。
これらは素晴らしい追加だ。だが本当に別のOSが必要なのだろうか。Androidの最新OSはあまり大きな話題になっていない。「iOS」はAppleが新しい「iPhone」や「iPad」を声高に宣伝するための道具だ。だとすれば、Windows 11が半年周期のOSアップデートの次期アップデートに単純に組み込まれる可能性は残っている。
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