パブリッククラウドに移行したワークロードをオンプレミスに戻す動きが増えている。そこには、クラウドのメリットを生かすことができず夢破れた企業の残念な現実がある。
クラウドのワークロードをオンプレミスに戻すのはクラウド戦略の後退に見えるかもしれない。だが、そこにはクラウドコストの高騰という理由がある。
Nutanixのマット・ヤング氏(アジア太平洋地域および日本担当シニアバイスプレジデント兼責任者)によると、企業はパブリッククラウドの柔軟性を好んではいるがコストが高くなり過ぎており、プライベートクラウドで同等の機能を模索する動きが増えているという。
顧客とのやりとりによって脱クラウドが起きていることは分かっているが、その規模は明らかではないとヤング氏は話す。Gartnerの調査(2019年)によると、クラウドの利用量は増え続けており“脱パブリッククラウド”は既定路線ではなく、まだ例外の域を出ない。
IBMのジム・フリーマン氏(アジア太平洋地域のグローバルテクノロジー部門CTO:最高技術責任者)は、脱クラウドに至った企業はワークロード配置戦略とクラウド管理スキルが不足している傾向があると言う。企業はアプリケーションの機能要件を見極めたワークロード戦略を持つべきだと同氏は話す。
「脱クラウドに至る原因は主に2つある。一つは、使わない機能はオフにすべきであることを理解していないこと。もう一つはアプリケーションのデータ使用率を意識しないことだ」(フリーマン氏)
規制当局が課すセキュリティとコンプライアンスの追加要求、SLA(サービスレベル契約)に影響するクラウドの停止、セキュリティとパフォーマンスに関するスキルギャップなども脱クラウドのきっかけになる。
だがクラウドの導入は続いている。シンガポールのDBS銀行は、プライベートクラウドを運用しつつ「Amazon Web Services」(AWS)を使ってWebサイトを公開している。
「AWSによると、パブリッククラウドにあるのは世界のコンピューティングの5%にすぎない。パブリッククラウド市場にはまだ拡大のチャンスがあるが、ワークロードの80%はパフォーマンスとコストの点でプライベートクラウドの方が適している。その結果として、ハイブリッドクラウドが非常に増えている」(ヤング氏)
パブリック、プライベート、ハイブリッドのどれかを選ぶにしても、従来の3層アーキテクチャでは不十分だ。クラウドネイティブアーキテクチャを採用するだけでなく、パブリッククラウドとプライベートクラウドの間を移動できるワークロード設計が必要だ。
ある推定によると、2023年には50億ドル(約5480億円)近くの成長が見込める市場を巡ってAWS、Nutanix、VMware、Red Hatなどのクラウド、インフラ、アプリケーションプラットフォームのサプライヤーがしのぎを削っている。
企業はスマートにクラウドを使う必要があるとして、ヤング氏は次のように話す。「後先考えずにクラウドの利用に踏み切ってはいけない。クラウドについてスマートにならなければならず、その大きな部分を占めるのがデータの場所だ」
「データをパブリッククラウドに配置したい。遅延の問題もあるのでローカルにも置きたい。誰もがクラウドに向かっている。人々が求めているのはハイブリッドモデルでのクラウド風エクスペリエンスだ」
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