企業にシステム運用の最適な方法を示す「ITIL」と「IT4IT」。それぞれ違うアプローチを取っているからこそ、両方を組み合わせる意味がある。ITILとIT4IT活用のこつを探る。
企業のシステム運用のベストプラクティス(最適な方法)をまとめた情報集として、英国のAxelosが提供する書籍群「Information Technology Infrastructure Library」(ITIL)と、OSの業界団体Open Groupが策定しているフレームワーク「IT4IT」がある。この2つはどう違い、企業はどちらを活用すべきなのか。前編「いまさら聞けない『ITIL』『IT4IT』とは? 使い物になるのか」はITILとIT4ITのそれぞれの概要を紹介した。後編となる本稿はITILとIT4ITを利用する意義を考える。
Open Groupは、「IT4ITはITIL 4の代わりではない」と主張する。同団体はIT4ITを、開発手法を指す「DevOps」「アジャイル開発」「ウォータフォール型開発」などと同じように位置付けている。IT4ITをITIL 4と組み合わせて利用することによってシステム運用力が高まるという。Open GroupはWebサイトに、次のように記載している。
ITILはIT管理の細かいプロセスを説明している。ただし、説明は非常に高いレベルで始まり、そのまま、詳細な話に移る。それに対してIT4ITは中間的なレベルを着眼点とし、「戦略からポートフォリオへ」「要求から開発へ」「問題の検知から修正へ」などの流れを定義する。ITILは実装と実行の方法に関して曖昧さを残している。
どの企業も、IT管理に関して改善の余地があるだろう。その代表例として、パッチの適用や更新の管理方法、ヘルプデスクでの応対方法などがある。企業はITIL 4とIT4ITを組み合わせて利用すれば、システムのさまざまな問題に対処するためのノウハウを得られるはずだ。
企業によっては、ITIL 4とIT4ITの実践が面倒だったり、実践のタイミングが分からなかったりする場合もある。最初からITIL 4とIT4ITを全社規模で実践する必要はない。Open Groupが勧めているのは、既存のプロセスを分析して問題点を洗い出し、改善に向けたロードマップを作成。それを踏まえて優先順位を付け、問題を解決するために適切なシステムを実装する方法を検討することだ。こうして1つの「成功パターン」を作れば、企業はその後、大きな負担なく全社展開ができる。
ITIL 4とIT4ITは、うまく活用すればシステム運用の効率を高めるために有効なツールになる。どれだけ効率化できるかは、IT部門の努力と工夫次第だ。
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