いまさら聞けない「ITIL」「IT4IT」とは? 使い物になるのか「ITIL」と「IT4IT」を比較【前編】

システム運用の最適な方法をまとめた「ITIL」と「IT4IT」がある。両者は何が違い、どちらを使えばいいのか。ITILとIT4ITの要点をまとめた。

2021年12月28日 05時00分 公開
[Clive LongbottomTechTarget]

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 自社システムをいかに効率よく運用するかがIT部門の腕の見せ所だ。システム運用のベストプラクティス(最適な方法)を知るには他社の取り組みが参考になるはずだが、競合企業からそうした情報を得るのは簡単ではない。

 幸いにも、さまざまな業界や規模の企業のシステム運用のベストプラクティスをまとめた情報集がある。英国のAxelosが提供する書籍群「Information Technology Infrastructure Library」(ITIL)と、OSの業界団体Open Groupが策定しているフレームワーク「IT4IT」がそれだ。この2つはどう違い、企業はどちらを活用すべきなのか。

あまり使い物にならない? ITILの弱点とその改善策は

 ITILは、企業に対してシステム運用のベストプラクティスを提案する書籍群だ。1989年に英国の政府機関が最初に公表し、2021年現在はAxelosが提供している。ITILは認知度が高い一方、「規範的過ぎて応用しにくい」といった批判の声がある。大半の企業はITILを部分的にしか実践せず、なおかつ、自社のニーズに応じて都合よく変更している。これはITILの本来の意図とは異なる。

 最新バージョンは2019年にAxelosが発表した「ITIL 4」だ。2007年発表の「ITIL 3」から大きな変更があった。ITIL 4が出るまでの約12年間は、クラウドコンピューティングや仮想化の技術が普及。金融危機といった世の中の動きも企業のシステム運用の在り方に影響を与えた。ITIL 4はそうした変化を反映させ、掲載情報を更新している。

 応用しにくいという批判の声を受け、ITIL 4は規範的なベストプラクティスではなく、「価値」や「ガバナンス」「実用」「改善」といったキーワードに沿ってシステム運用の枠組みを提供するよう、見せ方を工夫した。「ITILは絶対的なもの」というニュアンスが弱まり、これを企業は受け入れた。とはいえ、ITIL 4でも実践しにくさが引き続き指摘され、導入時に必要なトレーニングやドキュメントの費用も問題視されている。

プロセスよりも価値創造を重視 国際コンソーシアムが策定するIT4ITとは

 IT4ITを策定しているOpen Groupは、ITを開発したり購入したりする企業約800社による国際的なコンソーシアムだ。「企業が自社のビジネス目標を実現するために、ITをどう活用すればいいのか」を重視し、ITILとは違う切り口でシステム運用のベストプラクティスをまとめている。

 「計画」「構築」「開発」「運用」の4つを軸にして、IT4ITはIT運用のプロセスよりも、価値を作り出すための方法に焦点を当てる。この点では、ITIL 4とも類似している。Open GroupはIT4ITを実装するためのドキュメントの大半をWebサイトで公開しており、Open Groupの加盟企業なら無料で利用できる。ただし、加盟していない企業には有償になるため、注意する必要がある。


 後編は、企業にとってITILとIT4ITを利用する意義を考える。

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