テレワークは普及したものの、こうした状況の変化に合わせて事業継続計画(BCP)を練り直した企業はどれくらいあるだろうか。テレワーカーのBCPの整備が進みにくい理由とは。
2021年8月に米国ルイジアナ州ニューオーリンズに上陸したハリケーン「アイダ」は、100万人を超える人々に大打撃を与えた。一部地域では断水があり、通信や電力の復旧にも時間を要した。
自然災害が起きたときにテレワーカーが通信環境を維持できるようにすることを、テレワークのポリシーに含めている企業はめったにいない。専門家によると、企業はテレワーク用のバックアップ電源システムよりも、人間工学的に座りやすい椅子に費用を掛ける可能性が高いという。
その理由は、非常時に代わりとなる技術や製品があまり優れていないことが考えられる。家庭用発電機や衛星インターネットサービスは高額だ。自宅に導入した設備が、甚大な自然災害が起きた後に動作する保証もない。
米国テキサス州ヒューストンのサイバーセキュリティ企業Alert Logicでセキュリティおよびサポート運用部門のバイスプレジデントを務めるトム・ゴラップ氏は「発電機は3メートルも浸水すれば使えなくなる」と指摘する。衛星インターネットサービスも同様で、ハリケーンの影響でパラボラアンテナが地上に落ちてしまえば使えなくなる。その上こうしたシステムは、アパート暮らしの住民には選びにくい選択肢だ。
ニューオーリンズと同様、ヒューストンもハリケーンの深刻なリスクに何度か直面している。Alert Logicは、アイダのようなハリケーンの進路に当たらないホテルに、当面の事業継続に必要な従業員を移動させる計画を用意している。復旧に時間がかかれば、一時的に移動させる従業員の数を増やす可能性もある。ゴラップ氏は「その場合は志願者を募るシステムになるだろう」と話す。
2021年3月、米国会計検査院は連邦議会の議員への報告書の中で「異常気象は、米国における停電の頻度を上げ、停電を長期化させる主な要因だ」と述べている。
自然災害が増えるのに伴い、テレワーカー向け自然災害対策の注目度は高まる可能性がある。後編は、テレワーカーが自然災害に見舞われたときのBCPについて考察する。
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