コロナ禍をきっかけにコミュニケーションツールを使う機会が広がり、「仕事から離れられない」という問題が深刻化している。調査が示す「燃え尽き症候群の急増と離職リスク」とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、業務中にコミュニケーションツールを利用する機会が拡大した。その結果、コミュニケーションツールによって従業員と管理職がいつでもどこでも連絡を取れるようになったために、燃え尽き症候群に陥る従業員は多い。ITベンダー各社は2022年も引き続きこの問題の解決に取り組み、就業時間外に仕事から離れるための機能を強化しようとしている。
就業時間外のメールやチャットの連絡が従業員の私生活を浸食する問題は、何年も前から存在していた。パンデミックの影響でこの問題は「一層深刻化している」と、英国のエンジニアと科学者の労働組合Prospectでリサーチディレクターを務めるアンドリュー・ペイクス氏は話す。
この問題は「従業員の気持ちの切り替えを阻害し、ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)に悪影響を及ぼしている」とペイクス氏は主張。パンデミックで燃え尽き症候群に陥って過労を自覚する人が急増し、「重大な問題になっている」と語る。
コンサルティング企業Korn Ferryは専門職672人を対象に調査を実施。同社が2021年9月に発表した調査結果によれば、燃え尽き症候群に陥っている人が89%、パンデミック前より精神的疲労を感じるようになったと答えた人が81%に上った。
仕事と私生活の区別が曖昧になることは、従業員の離職リスクに影響を及ぼす。パンデミック前に、フルタイム従業員約7500人を対象に調査会社Gallupが実施した調査によると、燃え尽き症候群を自覚した従業員はそうでない従業員よりも、会社を辞める確率が2.6倍高くなる。テキサスA&M大学の准教授アンソニー・クロッツ氏は「不満のある従業員が続々と辞めていく『大量離職』の時代が始まる」と警鐘を鳴らしている。米国の「大量離職」は社会問題となっており、従業員をつなぎとめることはますます重大な課題となっている。
中編は、従業員の燃え尽き症候群の解決に向け、ベンダー各社が「仕事のオンオフ切り替え」を促す機能拡充の動向を紹介する。
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