小学生の頃から独学も交えて「コンピュータサイエンス」を学び続けてきた、ある女子生徒は、大学ではコンピュータサイエンスの学位を取得する気がないという。その理由とは。
英国の大学入学資格「General Certificate of Education Advanced Level」(GCE A Level)取得に向けた準備教育課程2年目のベラ・グリムジーさんは、GCE A Levelの試験科目として「コンピュータサイエンス」を選んだ。グリムジーさんが教室を初めて訪れると、女子生徒は自分1人だけだった。
コンピュータサイエンスを学び続けてきたグリムジーさんは、大学ではコンピュータサイエンスを専攻しないという。その理由は。本稿は、グリムジーさんの寄稿を紹介する。
私は今、新しい決断を迫られている。大学で「どの学位取得を目指すか」という決断だ。
GCE A Level取得に向けた準備教育課程に入る前は、コンピュータサイエンスの学位を取りたいと思っていた。「理系女子生徒」になる自分を思い描いていたのだ。
今はもう、コンピュータのハードウェアとコンピューティング思考の概念について3年間(英国の一般的な大学は3年制)も勉強したいとは思えない。もしもGCE A Level取得のための授業を受けていなかったら、コンピュータサイエンスの学位はもっと魅力的だったに違いない。
大学ではGCE A Levelの準備教育課程と違って、コーディングの実践的な側面を学べることは分かっている。だが私はコンピュータサイエンスではなく、地理を選ぶことにした。コンピュータサイエンスで学んだスキルを使って地理情報システムをプログラミングし、現実世界の問題解決にITを応用する重要性を学ぶことを楽しみにしている。
コンピュータサイエンスのクラスで女子生徒が私1人だったのは、なぜなのか。女性は幼いころからコンピュータサイエンスに触れる機会があまりなく、この分野のロールモデルが少ないことが原因だと思う。IT業界に進む女性が増え、女性のコンピュータサイエンス教員も増えれば、女子生徒がコンピュータサイエンスの道を選ぶきっかけになる可能性がある。
私は7歳から9歳の児童に、ビジュアルプログラミングツール「Scratch」でドラッグ&ドロップをさせるより、実際のコーディングを学ばせた方がよいと考えている。身に付けたコーディングスキルを応用し、意義のある問題を解決できる新時代のコンピュータサイエンティストが生まれる可能性があるし、女子と男子がITに親しむ度合いの差が縮まるはずだ。
女性がITの世界へ踏み出す機会は、一度限りではない。7歳の子が小型のシングルボードコンピュータ(SBC:最低限の要素から成るコンピュータ)「Raspberry Pi」に関心を示さなかったからといって、二度とコンピュータサイエンスを選ばないとは限らない。女性があらゆる角度からITの世界に入れるように間口が広がり、どの学位取得を目指すかにかかわらず、IT業界に参加できるようになってほしい。
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