ドイツが教育機関での使用を禁止した「Microsoft 365」。解禁はあり得るのか。Microsoft 365の機能を求める教育機関は、どうすればいいのか。
サブスクリプション形式でMicrosoftが提供するオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)の、ドイツの教育機関での使用禁止を巡り、欧州と米国の間の溝が深まっている。この問題で一番困るのは、IT化に取り組んでいる教育現場だ。セキュリティ専門家の見解とは。
Microsoftはドイツデータ保護会議(DSK:ドイツ連邦と16州のデータ保護監督機関で構成される調整機関)に対し、Microsoftが2022年に打ち出した「EUデータ境界」が、欧州連合(EU)から他国へのデータ転送の大幅削減につながると説明している。EUデータ境界とは、EU市民の個人データをEU域内にあるデータセンターのみに保存する、Microsoftの取り組みの総称だ。
DSKの報告書の公開を受け、ドイツ連邦データ保護監督機関のコミッショナー(最高責任者)を務めるウルリッヒ・ケルバー氏は、「Microsoft 365のデータ処理に関して部分的な改善はあった」と述べる。ただしドイツの教育機関が注視するプライバシーの観点から「さまざまな課題が残っており、データ保護のさらなる強化なしには教育機関での使用が考えにくい」とケルバー氏は言う。
セキュリティベンダーTutanotaの創設者であるマティアス・ファウ氏は、「2018年の『一般データ保護規則』(GDPR:EUの個人情報保護規則)導入から4年以上経過した」と指摘。Microsoftをはじめとする、米国に本拠を置くクラウドサービス事業者が、EU市民のデータ権を侵害していることは「信じられない」と述べる。
ファウ氏によれば、米国の大手クラウドサービス事業者には「ユーザーが自社のサービスを利用するなら、自社もユーザーのデータを利用する」という考えが浸透している。そのため、ユーザーからの苦情や当局からの罰則があっても、ユーザーのデータ利用はやめないというのが、同氏の見方だ。教育機関をはじめとした公共施設は、Microsoft 365の代替ツールとしてオープンソースソフトウェア(OSS)を使えば、データ保護の強化を図れるとファウ氏は語る。
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