「ドイツの学校でMicrosoft 365が使えない問題」は解消するのか、しないのか独の学校で「Microsoft 365」使用禁止、なぜ?【第5回】

ドイツが教育機関での使用を禁止した「Microsoft 365」。解禁はあり得るのか。Microsoft 365の機能を求める教育機関は、どうすればいいのか。

2023年02月22日 05時00分 公開

 サブスクリプション形式でMicrosoftが提供するオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)の、ドイツの教育機関での使用禁止を巡り、欧州と米国の間の溝が深まっている。この問題で一番困るのは、IT化に取り組んでいる教育現場だ。セキュリティ専門家の見解とは。

「ドイツの学校でMicrosoft 365解禁」はあるのか

 Microsoftはドイツデータ保護会議(DSK:ドイツ連邦と16州のデータ保護監督機関で構成される調整機関)に対し、Microsoftが2022年に打ち出した「EUデータ境界」が、欧州連合(EU)から他国へのデータ転送の大幅削減につながると説明している。EUデータ境界とは、EU市民の個人データをEU域内にあるデータセンターのみに保存する、Microsoftの取り組みの総称だ。

 DSKの報告書の公開を受け、ドイツ連邦データ保護監督機関のコミッショナー(最高責任者)を務めるウルリッヒ・ケルバー氏は、「Microsoft 365のデータ処理に関して部分的な改善はあった」と述べる。ただしドイツの教育機関が注視するプライバシーの観点から「さまざまな課題が残っており、データ保護のさらなる強化なしには教育機関での使用が考えにくい」とケルバー氏は言う。

 セキュリティベンダーTutanotaの創設者であるマティアス・ファウ氏は、「2018年の『一般データ保護規則』(GDPR:EUの個人情報保護規則)導入から4年以上経過した」と指摘。Microsoftをはじめとする、米国に本拠を置くクラウドサービス事業者が、EU市民のデータ権を侵害していることは「信じられない」と述べる。

 ファウ氏によれば、米国の大手クラウドサービス事業者には「ユーザーが自社のサービスを利用するなら、自社もユーザーのデータを利用する」という考えが浸透している。そのため、ユーザーからの苦情や当局からの罰則があっても、ユーザーのデータ利用はやめないというのが、同氏の見方だ。教育機関をはじめとした公共施設は、Microsoft 365の代替ツールとしてオープンソースソフトウェア(OSS)を使えば、データ保護の強化を図れるとファウ氏は語る。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news078.jpg

生成AIへの期待値の変化 DeepSeek台頭がマーケターに突きつける課題とは?
AI 生成の広告に対する反発が続いた1年を経て、マーケターはパフォーマンス結果重視で非...

news128.png

2024年に視聴者が検索したテレビCM 2位は中国のあのEVメーカー、1位は?
2024年にテレビCMを通して視聴者が気になりWeb検索したものは何だったのか。ノバセルが発...

news078.jpg

Googleの広告収益成長が鈍化、中国のアレが原因?
YouTubeなどのプラットフォームの成長率は、米国の選挙関連支出の急増にもかかわらず低迷...