電気自動車のF1「フォーミュラE」では、レースごとに限られた時間で車体の設定を完了するというルールがある。この難題に対処するために、Porscheのチームはクラウドサービスをどのように活用しているのか。
「ABB FIA Formula E World Championship」(以下、フォーミュラE)は、「電気自動車のフォーミュラ1(F1)」と呼ばれる自動車レースだ。フォーミュラEのレース中、出場チームは走行中の車体からデータを取得する。フォーミュラEに出場するTAG Heuer Porsche Formula E Team(以下、Porsche Formula E Team)は、その仕組みにクラウドサービスを活用する。
フォーミュラEはメキシコシティ、ロサンゼルスといった市街地をレース会場にするため、突然のコース変更もある。毎年のシーズンごとのルール変更も発生する。決勝レースに向けてチームが車体の設定に使える時間は24時間限りだ。
Porsche Formula E Teamはデータの格納にMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」(以下、Azure)を利用している。頻繁にアクセスするデータ「ホットデータ」を、障害が発生した場合と速やかなアクセスに備えて、レース会場に置くストレージに保存する。データはレース中リアルタイムに処理され、レース後クラウドストレージに格納される。クラウドサービスにデータを保存する際は、ストレージベンダーNetAppのストレージOS「ONTAP」をクラウドサービスで使用する「Cloud Volumes ONTAP」を使う。アクセス頻度の低い「コールドデータ」は、Azureのオブジェクトストレージサービス「Azure Blob Storage」に保存する。
2023年2月に開催されたNetAppのイベントで、自動車メーカーDr. Ing. h.c. F. Porsche(以下、Porsche)のフリーデマン・クルツ氏が講演した。クルツ氏は同社のモータースポーツ分野におけるITの責任者。講演で同氏は、同社が実践するNetApp製品を使ったデータ活用が、一般的な企業でも活用できる可能性について話した。
ただしフォーミュラEでクラウドサービスを使ってデータ管理をすることは、事例としては特殊な部分がある。レースはサーキットコースではなく市街地で開催され、出場チームの人数や予算にはルールが設けられている。レース会場への到着期日も決められており、週末のレースで走行する車体の準備に与えられる時間は24時間だけだ。
2023年のシーズン9では、出場チームは「Gen3」と呼ばれる新型の車体を使用する。Gen3の特徴は、Gen3以前の車体には無かった急速充電機能を持つバッテリーを搭載していることだ。バッテリーの最高出力は350キロワットに達する。出場チームにとっては、バッテリー出力を最大限に高めることが課題だ。
第2回は、限られた時間と条件の中でPorscheが活用するクラウドサービスを紹介する。
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