よくある汎用(はんよう)的な「SSD」とは機能面において一線を画すのが「コンピュテーショナルストレージ」だ。コンピュテーショナルストレージがなぜ生まれたのか、なぜ役立つのかなど基本を解説する。
演算処理をCPU(中央処理装置)が担い、SSDなどのストレージからCPUにデータを転送するのが一般的だ。だが「コンピュテーショナルストレージ」の場合は違う。例えばSamsung Electronicsは、演算処理が重くなりがちな用途向けのSSDとして「SmartSSD」を提供している。これはコンピュテーショナルストレージの一つだ。
CPUが演算処理を担うことを前提にしている通常のSSDと、コンピュテーショナルストレージの違いは比較的単純だ。まず、コンピュテーショナルストレージは大きく2つに分けることができる。
1つ目は、プログラム可能型だ。ユーザーが望む機能を実行するようにプログラムでき、その機能を実行するためにストレージ自体に演算機能が組み込んである。演算機能があることは、どのコンピュテーショナルストレージにも共通する。
2つ目は、プログラム不可能な機能固定型だ。一見すると標準的なストレージに似ているが、ストレージ自体に演算機能があるかどうかに違いがある。データ圧縮や暗号化といった単純なタスクを実行可能であるため、一般的な用途よりもデータ量が多くなる用途に向いている。ストレージでそうしたタスクを実行することで、CPUの負荷を軽減できる。
SSDに演算機能を組み込むコンピュテーショナルストレージが登場した当初は、プログラム可能であることに期待が集まっていた。だが市場の現状を見ると、プログラム可能型よりも機能固定型への注目度の方が高まっていると考えられる。
機能固定型は、特定用途の演算処理をストレージに担わせるというコンピュテーショナルストレージの基本構造をうまく生かしており、市場ではプログラム可能型よりも安定的に引き合いを得ている。プログラム可能型を手掛けたベンダーの一部は、既にその事業から撤退した。
コンピュテーショナルストレージは、比較的単純なコンセプトに基づいている。SSDは通常、SSD内部の操作を管理するためのコントローラーを搭載している。コントローラーの演算能力の一部を、SSD内部の操作以外にも活用したら何ができるのか――。これがコンピュテーショナルストレージの発想の基だ。
SSDからCPUへのデータ転送は、SSDの帯域幅(通信路容量)を消費する。一部の用途についてはSSD内部で演算処理ができるようにすれば、帯域幅を膨大な帯域幅を必要とする他の用途に割り当て、その処理を高速化できるというわけだ。
SSDはIOPS(1秒当たりの入出力数)などの性能において進化を続けてきた。だがシステム内のネットワークの帯域幅やコンピューティングリソースが不十分だと、そうした最新SSDの利点を生かし切ることはできない。コンピュテーショナルストレージを導入することで、CPUの負荷軽減や、システム内のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)の低減が見込めるのだ。
第2回は、機能固定型のコンピュテーショナルストレージについて、より具体的に解説しよう。
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