気軽に導入できることから企業はさまざまなSaaSを利用するようになった。各部門が自由にSaaSを導入した結果、サイロ化が生じている。企業が目指すべきITシステムの全体像を踏まえ、現状を分析する。
SaaS(Software as a Service)はインフラを運用しなくてもよいといった手軽さから、事業部門がIT部門を介さずに、独自に導入することができる。その結果、企業内ではSaaSが乱立し、サイロ化(システムやデータ同士が連携せずに孤立した状態になること)が起きている。なぜサイロ化は好ましくないのか。企業はどのようなITシステムの全体像を求めればいいのか。
各事業部門がそれぞれ固有のITニーズを持っている一方で、企業全体としてはワークフローを連携させることと、データに一貫性を持たせることが必要だ。「アプリケーション間のデータ同期や、ワークフローの自動化を軸にした連携が重要になる」と、調査会社Gartnerのシニアディレクターアナリストを務めるスティーブ・デン氏は指摘する。
企業は、一貫したデータ形式を使用して、協力会社や顧客が使うアプリケーションとSaaS間でデータを交換できるようにする必要がある。「複数のSaaSに分散しているデータから洞察を得ることが欠かせないからだ」とデン氏は語る。
仮に機能の充実したSaaSを使用していたとしても、一貫性を欠くデータはワークフローを悪化させ、メリットをいとも簡単に台無しにする。例えば、製品の販売システムと製造システムは、両システム間でデータを転送し、共有できる必要がある。「できない場合は、データの再入力が必要になり、業務のサイロ化が起きる」とデン氏は分析する。担当者が手入力で各システムにデータを再入力する方法は時間が掛かるし、エラーが起きやすい。
データはビジネスの生命線だ。複数システムでデータを共有し、活用してこそ意味がある。「企業が機械学習などのAI(人工知能)技術や自動化技術を導入したい場合、SaaSの連携はより重要になる」(デン氏)
とはいえSaaSは通常、独自のデータベースやクラウドインフラにデータを保持するため、データの共有は容易ではない。「SaaSとオンプレミスのアプリケーションが、異なる形式でデータを保存していたり、異なるデータモデルでデータを管理していたりすることがある」とデン氏は解説する。
後編はSaaSを連携させ、データを共有する具体的な方法について解説する。
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