企業が従業員のスキルアップを推進することは、従業員個人だけではなく、経営面にもメリットをもたらし得る。効果的なスキルアップ施策を実施すると、企業はどれほどのメリットを期待できるのか。
近年、従業員の働き方や成功に必要なスキルは変化している。テレワークが普及したことで、従業員はコラボレーションツールを使用する必要が生まれた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(感染症の世界的な流行)に伴う従業員の辞職・転職の影響も加わり、企業は社内のスキルギャップ(仕事に必要なスキルと、従業員が持つスキルの差)に悩まされている。その解消のためには、企業は新しい人材を雇うか、既存の従業員のスキルアップを図る必要がある。
出版会社John Wiley & Sonsは、2022年夏に米国企業の人事担当者600人に対して調査を実施し、その結果をレポート「Closing the Skills Gap 2023」にまとめた。レポートによると、調査対象である人事担当者のうち「所属組織にスキルギャップがある」と回答したのは69%だった。この数値は、2021年の55%から増加している。「スキルギャップは、今後企業が直面する最大の課題だ」と話すのは、人事サービスMcLean & Companyの人事リサーチ&アドバイザリー部門でプリンシパルディレクターを務めるジャネット・クラリー氏だ。「急速な変化に適応し、競争力を獲得するためには、スキルアップ戦略が不可欠だ」とクラリー氏は話す。
スキルギャップを放置していると、企業にとって必要な職位や役割を満たせない状態が続いてしまう可能性がある。専門家によれば、スキルギャップを埋めることは、社内に不足している役職を埋めるだけではなく、従業員の定着率の向上にもつながる。
「スキルアップには、デメリットよりも多くのメリットがある」と、メディア企業O'Reilly Mediaでチーフピープルオフィサーを務めるジャンヌ・コルディスコ氏は述べる。同氏によると、社内で優秀な人材を発掘したり、効果的な従業員のスキルアップを実施したりしている企業には、以下のメリットがある。
次回は、効果的なスキルアップ施策を構築するための6ステップのうち、1〜4つ目を紹介する。
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