製薬会社GSKが作った「マルチクラウドネットワーク」 その“新しさ”の正体新時代のネットワーク像【後編】

これからのネットワークはセキュリティと統合する必要がある、という見方がある。製薬会社GSKの事例を基に、新しいネットワーク像のヒントを探る。

2023年12月27日 05時00分 公開
[Deanna DarahTechTarget]

 ネットワークのオープン化を目指す団体「ONUG」(Open Networking User Group)は、今後はネットワークとセキュリティの統合を進め、管理を効率化すべきだと提言している。実際にネットワークとセキュリティの統合に取り組んだ企業の一つに、製薬会社GSK(グラクソ・スミスクライン)がある。

 GSKは世界各国に自社拠点を持っている他、研究所や大学、その他パートナーと共に膨大なデータを扱っている。GSKのエンジニアであるモハメド・カリッド氏が率いるチームは、従業員がデータを収集し、洞察を得るだけでなく、薬品の製造プロセスを効率化する必要があった。同チームはどのような戦略を立て、どのようなネットワークを構築したのか。

GSKが求めた「マルチクラウドネットワーク」 その新しさの正体

 世界各国に分散するデータを効率的に管理するため、カリッド氏はインフラのクラウド移行を決断した。「従来のオンプレミスのデータセンターでは不可能だったことが明らかだった」とカリッド氏は述べる。

 GSKのインフラチームは複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」の構築を決断し、以下の3つの目標を掲げた。

  • インシデントに強く、セキュリティ面で安心できること
  • リソースのセルフサービス(ベンダーを介さず自社で払い出すこと)機能
  • 各拠点からクラウドサービスへのネットワーク接続が可能なこと

 GSKのマルチクラウドのインフラやオンプレミスシステム、SaaS(Software as a Service)、パートナーのシステムを接続するために、ネットワークファブリック(異なる場所に点在するネットワークを一元的に扱うアーキテクチャ)が重要な役割を果たしたとカリッド氏は述べる。

 同社はセキュリティ機能とネットワーク機能の統合に積極的に取り組んだ。例えば、IDおよびアクセス管理(IAM)ツールを用いて、事業部門単位でネットワークをセグメント(ネットワークを分割した単位)化してアプリケーションやデータへのアクセスを制御した。

 こうしたアクセス管理権限を規定するセキュリティポリシーは、GSKが構築したセキュリティ情報およびインシデント情報を管理するシステムから、各クラウドサービスに適用できるようになっている。必要に応じて、ユーザーのアプリケーションやデータへのアクセス権限を部門単位より細かく制御しているという。

 その他、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)ゲートウェイを導入した。APIゲートウェイとは、クライアントとサービス間のAPIを利用するリクエストを制御する仕組みのことだ。

 GSKが利用するクラウドサービスのインフラは、異なる複数の地域にある。それらを結ぶネットワークのトラフィックを管理するために、単一のコントロールプレーン(制御機能)を開発中だとカリッド氏は説明する。

 GSKの目標はクラウド移行だった。その過程においてネットワークとセキュリティを統合した。この統合の道は、さまざまな組織が今後たどる道だ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

事例 株式会社BeeX

AWS開発未経験でも成功、ロッテが実現したデータ連携基盤構築と内製化強化事例

ロッテはシステムのAWS移行を進める中、DX推進の鍵は内製化比率の向上にあると考え、内製化の強化に踏み切った。本資料では、内製化の実現に向け、支援を受けながら、初めて取り組んだAWS開発と人材育成を成功させた事例を紹介する。

製品資料 株式会社ラクーンフィナンシャル

与信審査から督促まで代行、請求書払いの問題を解消する決済代行サービスの実力

B2B取引の決済手段として多くの企業が採用している請求書払い(後払い)だが、入金遅延や未払いが発生するリスクもある。そこで、これらのリスクと業務負担を解消する決済代行サービスが登場した。本資料で詳しく紹介する。

事例 株式会社ラクーンフィナンシャル

クレカ払いだけでは顧客を取りこぼす? Chatworkなどに学ぶ決済手段改善の方法

SaaSの決済手段ではクレジットカード払いを設定するのが一般的だが、B2B取引においてはそれだけだと新規顧客を取りこぼすこともある。Chatworkやココナラなどの事例を交え、決済手段を多様化する重要性と、その実践方法を解説する。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

複雑化するIT管理をどう効率化する? 分散環境で堅固なリモート管理を行う方法

ハイブリッドクラウドやエッジコンピューティングの普及に伴い、企業が管理すべきIT資源が急増している。こうした中で注目を集めるのが、あるクラウドサービスだ。分散環境における課題とその解決策について、導入事例とともに解説する。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

運用負荷やコストが増大、複数世代にわたるIT環境のモダン化をどう進める?

AI活用やデータドリブン経営が加速する一方で、レガシーインフラが問題になるケースが増えている。特に複数の世代にわたってIT資産が混在しているインフラ環境では、運用負荷やコストが増大してしまう。この問題をどう解消すればよいのか。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...