アクセシビリティーに配慮したPDFの作成は、企業にとってコンプライアンス(法令順守)とインクルージョン(包摂性)に関わる問題だ。具体的な4つのステップを紹介する。
PDFファイルは作成、共有、利用が容易なことから、ビジネスシーンの至る所で使われている。ただし、全てのPDFファイルが同じように作られているわけではない。特にアクセシビリティー(利用しやすさ)への配慮には違いがある。
ビジネスリーダーやコンテンツ制作に関わるチームにとって、アクセシビリティーに配慮したPDFファイル(以下、アクセシブルPDF)を作成することは、コンプライアンス(法令順守)とインクルージョン(包摂性)に関わる問題だ。アクセシブルPDFを提供することで、スクリーンリーダーのような支援技術を利用する読者を含め、あらゆる読者がドキュメントを読めるようになる。本連載は、アクセシブルPDFを作成する際に留意したい4つのステップを紹介する。
アクセシブルPDFを作成する工程は、元となる文書である「ソースドキュメント」の作成から始まる。Microsoftの「Microsoft Word」やGoogleの「Googleドキュメント」など、どのような文書作成ツールを使うとしても、アクセシブルPDFを作るには、ソースドキュメントの作成者がアクセシビリティーを念頭に置いて草稿を作成しなければならない。
アクセシビリティーに配慮したソースドキュメントの作成においては、以下3つのヒントに留意したい。
ソースドキュメントで、大見出しや小見出しを表すための「スタイルタグ」を使うと、ドキュメントの構造を整理するのに役立つ。具体的には、「表題」「副題」「見出し1」〜「見出し4」といったスタイルタグを利用可能だ。スタイルタグを設定することで、読者がスクリーンリーダーを介してドキュメントを読むときに、コンテンツの階層構造が明白になる。
最も重要なレベルの見出しに、2番目のレベルの見出しよりも大きなフォントや太字フォントを使用すれば、視覚的な違いが生じる。だがスクリーンリーダーは、このような書式設定の視覚的な差異を伝えることが難しい。ドキュメント作成者が見出しのスタイルを適切に指定すれば、スクリーンリーダーは各見出しのレベルを認識できるようになり、読者の正しい理解につながる。
視覚に障害のある読者は、画像や表といった視覚的な要素を簡単には利用できない。それを踏まえて、ドキュメント作成者は画像や表に代替テキストを追加するのが望ましい。代替テキストがあれば、スクリーンリーダーは画像や表を言葉で説明可能になる。
Microsoft Wordには、対処すべきアクセシビリティーの問題を指摘する検出ツール「アクセシビリティチェッカー」がある。このようなツールを利用して、必要な対処をするとよい。
中編は、4つのステップのうち2つ目を解説する。
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