ESGの“G”「ガバナンス」が地味過ぎでも無視できない理由投資家が着目するポイント

ESG経営において、環境問題や社会課題への取り組みは消費者や従業員の理解を得やすい。一方でガバナンス強化は見過ごされがちだが、等しく重要だ。ガバナンス強化に直結するアクションの具体例を探る。

2024年03月10日 09時30分 公開
[Ben LutkevichTechTarget]

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 経営にESG(環境、社会、ガバナンス)の要素を取り入れようと考えた時、それぞれどのような取り組みを実施すればよいのか。“環境”と“社会”は分かりやすい。例えば炭素排出量の削減は環境に、倫理的なサプライチェーンの構築は社会にひも付く。気候変動やサステナビリティ(持続可能性)、DEI(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)といったテーマもある。

 一方で投資家が注目しやすいテーマなのが、企業の統治や事業の運営に関わる“ガバナンス”だ。ガバナンスを強化するためには、取締役会による事業の監視や透明性の確保をはじめ、さまざまな取り組みを実施しなくてはならない。

ガバナンスは地味過ぎる? それでもやらないと駄目な理由

 ビジネスを通じて環境や社会課題を解決する上では、規則や方針、手順を決める必要がある。これもガバナンス強化の一環だ。

 ESGに関する情報をまとめた報告書を公開することで、企業として責任ある行動を取っていることを社外に示せるようになる。投資家は報告書の内容から、その企業がリスクの高い経営をしていないかどうか判断できる。ESGの各要素は企業のリスク管理や事業戦略、ひいては企業の収益にも影響を及ぼす。

コーポレートガバナンス強化に必要なアクションとは

 ガバナンス強化の具体的な例を紹介する。取り組みを検討する際のヒントにしてほしい。

  • 取締役会が以下の状態にあることを確認する
    • メンバーが多様性に富んでいる
    • 企業を監視する義務を果たしている
    • 企業から独立した立場にある
  • 企業としての誠実さを維持するために以下を実施する
    • 内部告発プロセスの整備
    • 利益相反の防止
    • 記録の保持
    • 財務管理、会計処理、会計報告
    • 内部調査と是正措置といった腐敗防止対策
  • 以下のような場面で管理職や経営層がリーダーシップを発揮する
    • 製品やサービス品質の保持
    • 市場戦略や人事における意思決定の実施
    • 事業戦略の策定
  • 以下の防止に取り組み、企業の競争力を向上させる
    • 共謀(競合他社との間で製品やサービスの価格を操作したり取引に制限をかけたりして市場を支配すること)
    • 市場の独占
    • 競合他社の排除や不当な条件の強要
  • 以下を実施し、倫理的な経営をする
    • ステークホルダーと適切に協働し、利益を尊重する、誠実な事業
  • 主要業績評価指標(KPI)を設定し報告するための枠組み作成
  • 以下のようなインセンティブ制度を構築する
    • 従業員の意欲的な行動を引き出し業績に影響を与える報酬の規定
    • 報酬制度や昇進制度、不祥事の対処策や懲戒手続きの構築
  • 政治活動における以下の行為を精査する
    • 政治団体との関わり方
    • ロビー活動
    • 選挙資金の調達
    • 政治献金の実施
  • 情報の透明性を保持するために以下を実施する
    • ステークホルダーや一般市民への情報開示や共有
  • 以下の行動に基づいた税務戦略を確立する
    • 税務上の義務を果たし、責任ある合法的な方法に基づいた税務処理
    • 税務コンプライアンスの保持
    • 税務情報の開示
  • 以下の行動に基づいてリスク管理に取り組む
    • 過去に発生したインシデントや不祥事応対への理解
    • 情報管理や規制順守のための枠組み(情報ガバナンス)の構築
    • サイバーセキュリティ対策
    • 社外監査役を利用した監査と評価の実施
  • 以下の取り組みに基づいて経営資源を配分する
    • 金銭、人材、物的資源などの適切な配分
    • 人的資本の管理やM&A(合併と買収)の実施
  • ステークホルダーとのコミュニケーションにおける優先事項を定義する
    • ステークホルダーとのコミュニケーション方針と手順の策定
  • 以下の行動に基づいてサプライチェーンを管理する
    • サプライチェーンとバリューチェーン(付加価値のつながり)の効率的な管理の実施
    • 原産国や関連する契約の開示
    • サプライチェーン全体で持続可能な手法の実践

コーポレートガバナンスの良い例、悪い例

 コーポレートガバナンスが十分に機能していない場合、ステークホルダーとの関係悪化や財務状況の悪化、事業目標の未達など、さまざまなトラブルが起こり得る。ガバナンスが機能している企業とそうでない企業では実際に何が起こったのか、4社の事例を紹介する。

コーポレートガバナンスが不十分だったFTX、Twitter

 2019年設立のFTXは2022年11月に経営破綻した。創業者サム・バンクマン=フリード氏は2023年11月、詐欺罪で有罪判決を受けた。監督体制に不備があり、従業員は同社の資金をぜいたく品の購入に充てていたという。

 Twitter社の事例はリーダーシップやステークホルダーの優先事項を見誤り、資源配分の不備を呈した出来事といえる。2022年10月、イーロン・マスク氏はTwitter社を買収。従業員の80%を解雇したと報じられた。この結果、つぶやきの監視機能が低下し、ヘイトスピーチを助長するつぶやきが横行したことで、広告主が相次いでTwitterから撤退する事態となった。これを受けて同社は財務的な損害を受け、企業イメージを悪化させた。

適切なコーポレートガバナンス体制のあるPatagonia、Unilever

 Patagoniaは規制順守にとどまらず、企業としてのミッションを追求することで、サプライチェーン管理やビジネスインテグリティを実現している好例だ。サプライチェーン全体のカーボンフットプリント(活動を通じて排出される二酸化炭素量)を削減するために、店舗やオフィス、配送センターのエネルギー源を100%再生可能エネルギーに切り替えている。環境に配慮した素材を使用し、労働環境の改善に向けた仕組み作りもしている。

 Unileverは2023年2月に公開したガバナンス報告書「TheGovernance of Unilever」で、ESGの実現に向けた同社の具体的なアクションを示している。例えば、再生可能エネルギーへの移行や植物由来の製品ラインアップ拡大など、地球環境への配慮を目的とした目標を掲げている。取締役会の役割や役員の責任を明確に定義している点も注目に値する。同社のWebサイトでは、気候移行行動計画(Climate Transition Action Plan)の進捗(しんちょく)状況を開示している。

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