仕事に使いたくなる「メタバース」の“面白そうな活用例”とは?広がるメタバースの活用例18選【前編】

メタバースが十分に普及しているとはまだ言い難い状況だが、その活用場面は着実に広がっている。既にメタバースの活用が進んでいる8つの用途を紹介する。

2024年06月06日 08時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

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 仮想空間「メタバース」は、誰もが利用するほど広く普及しているとは言えないが、それでも活用は着実に進んでいる。「人工知能(AI)やスマートゴーグルといったメタバースに使われる技術の進化が背景にある」。マーケティングコンサルティング企業PitchFWDの創設者であり、ニューヨーク大学(New York University)シュタインハートスクール(Steinhardt School)で非常勤教授を務めるサマンサ・G・ウォルフ氏はそう語る。

 メタバースはどのような場面で役に立つのか。メタバースの活用が進んでいる、あるいは活用がこれから進む可能性のある用途を8つ紹介する。

仕事に使えそうな「メタバース」の8つの活用例

1.バーチャルイベントの開催

 コンサートやスポーツの試合などのイベントが、メタバースで開催されるようになっている。「物理的に同じ空間にいなくても、アーティストや周りにいる観客の存在を感じられ、イベント会場にいるような感覚を得られる」とウォルフ氏は話す。

 アリアナ・グランデやトラヴィス・スコットらアーティストは、オンラインゲーム「Fortnite」内でコンサートを開催している。サッカーの試合などスポーツの分野でも、今後メタバースを活用したイマーシブ(没入感があること)なイベントが増えると専門家は予測する。

2.従業員向けトレーニングの効率化

 コンサルティング会社Deloitte Consultingでマネージングディレクターを務めるアラン・クック氏は、「従業員向けトレーニングもメタバースの主要な用途の一つだ」と話す。

 トレーニング用途としてのメタバースには大きく2つの強みがある。1つ目は、学習効果の高さだ。実地訓練は、講義やテキストをベースにした受動的なトレーニングよりも学習効果が高いとされている。2つ目の強みは、状況の再現性の高さだ。現実世界では再現が難しい訓練でも、メタバースでは安全かつコストを抑えて実施できる。

 例えば、以下のような事例がある。

  • 手術場面を再現し、外科医がメタバース内で術前に練習することで技術向上を図る
  • メタバース内に建設現場を再現し、作業員向けに作業中の安全確保の方法を指導する
  • 海上油田における大規模火災をメタバース内で再現し、安全確保のシミュレーションを実施する

3.専門家によるリアルタイムサポートの実現

 メタバース経由で、専門家のサポートをリアルタイムで提供できる。例えば作業者が装着したスマートグラス上にテキストや動画で指示を表示する、現場作業者の視界を遠隔地の専門家がリアルタイムで把握し、音声で指示を出すといった使い方が可能だ。

 「メタバースの普及によって、車のタイヤ交換など日常的な作業についても、専門家の指導を簡単に仰げるようになる可能性がある」とウォルフ氏は話す。

4.シナリオの検証

 メタバースを使うことで、「仮定のシナリオ」を容易に検証できるようになる。こう話すのは、マイアミ大学のビジネスとデザインの新興技術学部で助教授を務め、ゲームとシミュレーションプログラムのディレクターでもあるジェフリー・ロング氏だ。

 メタバース内でシミュレーションすれば、現実の素材や製品を用いた場合と比べて、所要時間とコストを大幅に抑えることができる。例えば気候科学者は、100年に1度の大嵐が発生した場合の都市への影響をシミュレーションして都市計画家に提示できる。同様に、適切な対策を取っていた場合の影響も示せる。

5.研究開発、設計、試作の効率向上

 既にさまざまな企業が研究開発、設計、試作、テストにデジタルツインを使用している。例えば自動車メーカーや航空宇宙企業は、仮想空間で新しい設計を作成して機能をテストしている。メタバースの成熟に伴い、さらに多様な産業で、より多くの企業がそうした動きに続くと専門家は予測する。メタバースを使えば、実世界において実物で研究開発、設計、テストを実施する場合と比べ、所要時間とコストを抑えることができる。

6.想像の実現

 メタバースは、単に2次元画面で見るよりもはるかに臨場感のある没入型の体験を提供する。建築士は、これまで建築物の見本としてミニチュアモデルを作成して使ってきた。メタバースを使えば、イマーシブな空間の中で、現実の世界にある建物をリアルに表現できる。建物の中を探索して、電気やガス、水道などの設備、骨組みといった内部構造を見ることも可能だ。

7.教育現場での活用

 「将来的に、メタバースで授業を受けることが一般的になる可能性がある」と、マイアミ大学(Miami University)ファーマースクールオブビジネス(Farmer School of Business)のマーケティングおよびインタラクティブ学教授を務めるグレン・プラット氏は話す。特に、教育と娯楽を組み合わせた「エデュテインメント」(edutainment)への関心が集まっているという。

 エデュテインメントはゲーム要素が含まれるため、学生の関心を引き、効果的に学習内容を定着させる効果がある。クック氏は、「楽しむことこそ一番の勉強方法だ」とコメントする。

8.小売業界における新しい体験の創出

 小売業界では、メタバースに類似した体験を既に提供している。例えば、眼鏡や化粧品の仮想試着や、家具配置のシミュレーションなどだ。「メタバースはこれらの体験をさらに拡張する」。こう語るのは、セントトーマス大学(University of St Thomas)のソフトウェアエンジニアリングおよびデータサイエンス学部教授兼学部長を務めるマンジート・リージ氏だ。

 例えば、クルーズ船旅行会社であれば顧客向けに客室のバーチャル見学ツアーを実施し、予約の参考情報を提供できる。不動産業者はメタバース上で定期的に物件ツアーを開催し、潜在的な顧客にアプローチが可能だ。自動車メーカーは、車のサイズや外観、内装を顧客に簡単に試してもらうことができる。


 後編は、より広い視点でメタバースに期待できる用途を紹介する。

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