テレグラムCEO逮捕で深まる「暗号化メッセージアプリ」の闇 その影響は?“反検閲”を掲げるチャットツール

メッセージングアプリケーション「Telegram」を手掛けるTelegram MessengerのCEOが逮捕された。犯罪行為に悪用された責任を、ツールの提供事業者どこまで追う必要があるのか。Telegramは今後どうなるのか。

2024年09月08日 09時00分 公開
[Bill GoodwinTechTarget]

 メッセージングアプリケーション「Telegram」を手掛けるTelegram Messenger(以下)の創業者でCEOのパベル・デュロフ氏は2024年8月下旬、複数の犯罪行為に関係する疑惑で逮捕された。Telegramが違法な取引を含めたさまざまな犯罪行為に悪用されていたことが背景にあるものの、ツールの提供事業者がその責任を問われるべきではないという見方もある。Telegramは今後どのような状況に置かれる可能性があるのか。この事件の影響とは。

“反検閲”を掲げる「Telegram」は今後どうなる?

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 2024年8月、デュロフ氏はプライベートジェットでパリに到着した後に逮捕された。このロシア生まれの億万長者は、500万ユーロの保釈金で釈放され、フランス領土からの出国は禁止されている。

 フランスの検察はデュロフ氏について、麻薬密売や詐欺など犯罪グループによる違法取引の共謀に関わったとする12件の容疑を挙げている。同氏は暗号化サービスの提供に関するフランスの規制に違反したという疑いもかけられている。フランスの法律では、暗号化サービスを提供する場合には、特定の条件に従って正式な承認を得る必要があることが定められている。

 一方で欧州委員会は、テレグラムがEU(欧州連合)でのユーザー数を正確に報告しているかどうかを確認するための調査を進行中だ。EU内でプラットフォーム(ツール)のユーザー数が4500万人を超える場合には、超大規模オンラインプラットフォーム(VLSOP)に分類される。VLSOPの提供事業者には、違法コンテンツのリスク軽減や、社内コンプライアンス部門の設立、外部監査を受ける義務などが課せられる。

 Telegram社は、同社のメッセージングサービスがEUの法律を順守していると主張。「そのプラットフォーム(ツール)が悪用されている責任をプラットフォームの所有者が負っていると捉えるのは不合理だ」とコメントしている。

 2024年2月に、Telegram社はEUにおける過去6カ月間の月間アクティブユーザー数が推定4100万人で、EUの基準を下回っていると報告していた。欧州委員会は、Telegram社の報告の正確性を確認するための調査を進めている。

 欧州委員会はTelegramをVSLOPに指定する権限を持っている。EUにおける同ツールのユーザー数が4500万人以上であることが判明した場合、同ツールは欧州委員会の直接監督下に置かれる可能性がある。

反検閲プラットフォームとしてのTelegram

 ロシア生まれのドゥロフ氏は「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」として知られている。同氏はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Facebook」のロシア版として「Vkontakte」(VK)を立ち上げた。ロシア政府からVKのユーザーデータを開示するよう圧力を受けたことを機に、2014年に同国を離れた。

 Telegram社は同社のメッセージングサービスを「反検閲プラットフォーム」(検閲に対抗することを目的にしたツール)として位置付けており、「イランやロシア、ベラルーシ、ミャンマー、香港などでの民主化運動で重要な役割を果たしてきた」と主張している。

 Telegramでは最大20万人のグループでメッセージを共有できる。Telegramの機能の一つである「Secret Chats」(シークレットチャット)を使うと、メッセージはエンドツーエンドで暗号化され、送信者と受信者以外の第三者がそのメッセージを読むことはできなくなる。一定時間が経過すると、メッセージは消えてサーバに保存されることはない。

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