GPUやNPUの時代にこそ「CPUの理解」が欠かせないのはなぜ?AI時代のプロセッサ再入門【第1回】

コンピューティングの技術はAI技術の台頭とともに様変わりしている。CPUやGPUの他、TPUやNPUといったプロセッサも使われるようになっている。まずは、全てのプロセッサの理解に欠かせないCPUの基本を押さえよう。

2024年10月22日 05時00分 公開
[Stephen J. BigelowTechTarget]

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 コンピューティング技術の歴史において、人工知能(AI)技術の台頭と、それに伴う各種プロセッサの進化は目覚ましい進展の一つとなった。AI技術の活用が広がる昨今では、AI関連のタスクを実行するためのプロセッサについて理解することは重要だ。とはいえ、まずはCPUについて理解していなければ、他のプロセッサの理解は進まない。以降ではその基本を解説する。

まず理解すべき「CPU」の大切な役割とは

 従来、コンピューティングのアーキテクチャにおいて中心的な役割を担ってきたのがCPUだ。あらゆる処理を高速でこなすCPUの登場が期待されたが、開発者たちはすぐに限界に気付いた。より多くのトランジスタを集積しようとするほど、演算能力やコスト、消費電力の点で効率が悪くなることがあるからだ。

 処理タスクを限定して高パフォーマンスを発揮することを目的に登場した命令セットアーキテクチャとしては、「RISC」(Reduced Instruction Set Computing:縮小命令セットコンピュータ)がある。ただしRISCは、汎用(はんよう)のCPUを単純化したものに過ぎなかった。

 必要とされる処理能力を満たすために、汎用CPUと連携して動作し、CPUだけでは処理できない特定のタスクをオフロード(移し替えること)する、新しい種類のプロセッサが誕生した。それが「GPU」(Graphics Processing Unit:グラフィックス処理装置)だ。

 GPUは、コンピュータグラフィックス(CG)やコンピュータ支援設計(CAD)など、専門的なビジュアライゼーション(視覚的表現)に必要な、数多くの演算やデータ操作を実行するために使われるようになった。次第にGPUは、機械学習などのAI(人工知能)技術によるタスクを実行するためにも使われるようになった。AI関連のタスクでは大量の演算処理を実行しなければならず、それにGPUが役立った。

 AI技術の利用が拡大する中で、AI関連のタスクに特化したプロセッサも登場している。例えば、

  • 行列の乗算を得意とする「TPU」(Tensor Processing Unit:テンソル処理ユニット)
  • 人間の脳の仕組みを模倣したニューラルネットワークの計算に特化した「NPU」(Neural Processing Unit:ニューラルプロセッシングユニット)

と呼ばれるプロセッサが登場している。以降では、AI技術の活用において重要な役割を果たすGPU、TPU、NPUなどについて詳しく解説する。とはいえ、そうしたプロセッサがなぜ必要なのかを理解するには、まずはCPUがどのような役割を担うのかを知っておくことが欠かせない。

「CPU」の役割とは

 CPUはさまざまな異なるタスクを実行できる。そのタスクは通常、大まかに以下の4つのカテゴリーに分類できる。

  • データ移動
  • 単純な算術演算(計算によって数値を求める演算)
  • 基本的な論理演算(真偽値を求める演算)
  • ハードウェア制御とハウスキーピング(不要なデータの消去)

 例えばCPUは、以下のようなタスクの処理に適している。

  • ワードプロセッサの実行
  • ストレージへのドキュメント保存
  • キーボードやマウスとの連携
  • ディスプレイへの出力

 より複雑な演算処理の場合、CPUは他のプロセッサと連動して処理を実行できるようにする。例えば、コンピュータゲームのソフトウェアを起動、実行する場合がいい例だ。処理負荷の高いタスクが発生した場合、CPUはサポート役のプロセッサにタスクを渡し、ソフトウェアの通常の動作と統合して機能するようにプロセスを指揮する。


 次回は、AI関連のタスクを実行する場合に、CPUとGPUにどのような違いがあるのかを解説する。

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