「クラウドファースト」と「クラウドスマート」は根本的に何が違う?最適なクラウド戦略とは【前編】

企業にとってクラウドサービス活用の重要性は増している。クラウドサービスを優先的に利用する「クラウドファースト」と、クラウドサービスとオンプレミスインフラを使い分ける「クラウドスマート」の違いとは。

2024年12月04日 05時00分 公開
[Will KellyTechTarget]

 企業がコスト効率化やイノベーション(革新)を追い求める取り組みの中で、クラウドサービス活用の戦略は重要な位置を占めている。どうすればより効果的にクラウドサービスを活用できるのか。クラウドサービスを優先的に採用する「クラウドファースト」と、クラウドサービスとオンプレミスを使い分ける「クラウドスマート」の2つの戦略について、その違いやメリットを説明する。

「クラウドファースト」で得られるメリットとは

 クラウドファーストでは新規のITサービス利用時や、ITシステムの導入および更新時のインフラとしてクラウドサービスを優先的に採用する。クラウドファーストの主なメリットは次の通りだ。

  • コスト効率
    • コストは利用したコンピューティングリソースのみ
    • ハードウェアやインフラの初期費用などを削減できる
  • 拡張性と弾力性
    • 企業は状況に合わせてITシステムの規模を増減しやすい
    • AI(人工知能)技術などの新規技術もビジネスニーズに応じた規模で利用できる
  • テレワークの導入しやすさ
    • 企業がクラウドサービスの形で企業のデータやアプリケーションを利用できる仕組みにしておくことで、従業員はインターネット回線さえあれば企業のリソースにアクセスしやすくなる
  • 自動化
    • システムのアップデートやセキュリティパッチの適用をクラウドサービスベンダーがしてくれる場合がある
    • クラウドサービスベンダーは自動化ツールを提供しているケースがあり、企業はクラウドファーストによって自動化を進めやすくなる可能性がある

 クラウドファーストでは、企業や開発者は継続的にクラウドサービスの利用状況を監視して、コンピューティングリソースを使用実態に合わせて適正化する必要がある。そうした取り組みがなければ、過剰プロビジョニング(インフラのリソースを配備すること)による過剰出費を招く。

クラウドスマートとは?

 クラウドスマートでは、クラウドサービスのメリットに注目すると同時に、一部のワークロード(アプリケーション)ではオンプレミスインフラを採用する。クラウドサービスを積極的に利用する企業でも、データの保護やコンプライアンス(法令順守)を優先する場合にオンプレミスインフラを採用することがある。クラウドスマートを採用する企業は、同時にオンプレミスインフラとクラウドサービスを併用する「ハイブリッドクラウド」戦略をとることが珍しくない。

 クラウドスマートの主なメリットは次の通りだ。

  • コスト最適化
    • 全てのアプリケーションがクラウドサービスの利用によって運用コストを削減できるわけではない
    • クラウドスマートではクラウドサービスのベンダーの変更や解約を選択肢に含めながら、継続的にコストを監視する
  • 柔軟性(変化に迅速に対処する能力)
    • 企業はアプリケーションの要件に応じて、オンプレミスインフラも含めた最適な場所へいつでも移行できる
  • セキュリティとコンプライアンス
    • クラウドサービスはセキュリティ対策やデータの保護、コンプライアンスの観点から適さない可能性がある

 ただし、クラウドサービスとオンプレミスインフラの統合はスムーズに進むとは限らない。特にレガシーシステムを抱えている場合、両者の統合は容易ではない。仮に技術的に統合が可能であっても、社内の人材のスキルやノウハウが不十分であれば、コストの増加や運用の複雑化を招く可能性がある。


 次回はクラウドファーストとクラウドスマートを比較する時にどこに注目すればいいのかを解説する。

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