昨今のIT雇用市場にはどのような変化が起きているのか。給与水準やスキル需要の変化、業界ごとの雇用動向などに焦点を当てて解説する。
AI(人工知能)技術をはじめとするITの急速な進化に伴い、雇用市場にはさまざまな変化が生じている。この変化に柔軟に対処することが、企業と求職者の双方にとって重要だ。本稿は統計データを基に、IT人材の給与水準やスキル需要の変化、業界ごとの雇用動向について考察する。
オンライン研修ベンダーSkillsoftが公開した調査レポート「2024-25 IT Skills and Salary Report」によると、IT担当者の世界の平均給与は8万8448ドル(約1150万円)と、2023年の8万4475ドル(約93万円)から約5%増加した。北米の平均給与は11万3211ドル(約1470万円)で、アジア太平洋、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、中南米など他の地域と比べて高かった。
同レポートによると、最も高い給与を得ているのはCレベルの幹部(CEOなど肩書に“C”が付く経営幹部)で、次いでITアーキテクチャと設計の担当者、クラウドコンピューティング分野の担当者だった。北米では、ソフトウェア分野が最高水準の給与を誇る一方、教育分野のIT担当者の平均給与が最も低かった。
ビジネスにおけるAI技術の活用が進む中で、 AI関連の求人は増加している。求人サイトIndeed.comの調査機関Hiring Labは、2023年1月から2024年2月にかけて、生成AI関連の求人が30倍に増加したと報告している。
こうした背景から、AIスキルの需要はますます高まっている。履歴書作成サービスを展開するResumeTemplates.comが2024年8月に公開したブログエントリ(投稿)によると、採用担当リーダーの87%が「AI技術に関する経験やスキルの価値は高い」と回答した。AIスキルは現職者にもメリットをもたらす。例えば、人材紹介会社Robert Halfの調査レポート「2025 salary guide」によると、AIスキルを持つ従業員の給与を引き上げる企業は44%に上るとされている。
事業用不動産サービス会社CBREが公開した調査レポート「Scoring Tech Talent 2024」によると、2023年のIT業界における技術系人材の雇用成長率は減速。非IT業界の成長率が上回ったという。
同レポートによると、2023年にIT業界が新たに創出したIT人材雇用は約2万9000件だった。IT業界以外のサービス分野では約5万人、次いで運輸・倉庫・卸売分野で約4万5000人の雇用が創出された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)以降、IT業界ではレイオフ(一時解雇)が続いており、その勢いは衰えを見せていない。IT企業の雇用情報を追跡するWebサービスtrueup.ioの「The Tech Layoff Tracker」によると、IT業界では2024年に1000件以上のレイオフが実施され、23万人以上が影響を受けたという。
こうしたレイオフの傾向に伴い、IT人材の失業率は上昇している。IT業界団体のコンピュータ技術産業協会(CompTIA)が2024年7月に公開したブログエントリによると、2024年の技術者の失業率は3.7%を記録した。
人材紹介会社Robert Halfは、IT系管理職を対象に実施した調査レポート「Robert Half's 2025 salary guide」を発表した。レポートは、優秀な人材を確保するための措置について言及している。これによると、回答者の56%が採用で実務経験を重視しない方向にシフトしていた。加えて、45%が給与の引き上げを進めていた。これにより、より迅速にIT系人材を確保する狙いだ。
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