企業向けAIモデル群としてIBMが打ち出している「Granite」には複数のメリットがある一方で、課題も存在すると専門家は指摘する。どのような壁にぶつかっているのか。
IBMは2024年10月に企業向け大規模言語モデル(LLM)ファミリー「Granite」の新版「Granite 3.0」を発表した。オープンソースライセンス「Apache License 2.0」の下で提供されており、企業はバイアス(偏見)やヘイト(憎悪)といったリスクに対処できるAIモデルなど、複数の目的に応じてAIモデルを選択できる。同社はGraniteを用いてAI技術関連サービス群「watsonx」の強化に取り組み、AI市場での存在感を示そうとしている。ただし一部の専門家は、同社のAI分野におけるある課題を指摘する。
「動きが速いAI市場において、IBMは『先行者利益』がないという弱みを抱えている」。調査会社Constellation Researchでアナリストを務めるアンディー・トゥライ氏はそう指摘する。ユーザー企業をIBMのAI関連サービスに移行させるのは簡単ではないというのだ。
IBMがAI分野で重点を置いているのは、ソースコード生成とそれに関連する用途だ。「Graniteはレシピ作成、休暇の計画、ニュースの要約といった一般消費者向けの使い方もできることをIBMは示さなければならない」と、アナリスト企業Moor Insights & Strategyのストラテジーアナリスト、パトリック・ムーアヘッド氏は語る。ムーアヘッド氏の考えでは、IBMは生成AIへの継続的な投資とイノベーションが可能であることを、企業に納得してもらう必要がある。
調査会社Gartnerでアナリストを務めるアルン・チャンドラセカラン氏は、Graniteがさまざまな用途に使えることをIBMは示したものの、ユーザー企業は自然言語での問い合わせに対する性能を知りたがっていると話す。「要約、コンテンツ生成、質疑応答といった自然言語処理における用例に関して、IBMはまだ十分な実績を確立できていない」とチャンドラセカラン氏は指摘する。
IBMのAI技術関連サービス群「watsonx」では、Graniteとサードパーティー製AIモデルの両方を利用可能だ。「どのような場合にサードパーティー製AIモデルではなくGraniteを利用すべきなのかを企業に知ってもらうことが不可欠だ」と、チャンドラセカラン氏は言う。
「IBMはもっと分かりやすくしなければならない。用途に適したAIモデルを選択し、評価できる手段を提供する必要がある」(チャンドラセカラン氏)
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