少ないデータでAIモデルを訓練する「フューショット学習」が、AI開発の課題を克服する手法として注目を集めている。その利点と課題をおさらいしよう。
従来のAIモデルでは、大規模なデータセットを用いた教師あり学習が一般的だった。しかし、大量のデータを用意することはコストや時間の面で大きな負担となり、必ずしも現実的ではない。こうした背景から少ないデータでAIモデルを訓練する「フューショット学習」(Few-shot Learning)が注目を集めている。
フューショット学習にはさまざまな利点がある一方で、制約が生じる場面もある。そのため、データや適用分野の特性を考慮しながら、慎重に活用を進めることが重要だ。本稿は、フューショット学習のメリットとデメリットを解説する。
まず、フューショット学習には以下のようなメリットがある。
フューショット学習は、大規模なデータ収集が不要なため、時間やコスト、ストレージリソースを節約できる。データのラベル付けや分類作業の負担も少なくて済む。
一般的な教師あり学習と比較して、フューショット学習では必要なコンピューティングリソースや学習時間が大幅に少なくて済む。
フューショット学習では、大量のデータセットを必要としないため、データが不足している場合や、データ取得コストが高い場合でも、実用的なAIモデルを構築できる。
フューショット学習では、少量のデータで迅速に学習できるため、新しいデータや環境の変化に適応しやすい。特に、変化が激しい分野では高い汎用(はんよう)性を発揮する。
一方でフューショット学習には、AIモデルの精度低下を招きかねない潜在的な欠点も幾つか存在する。
一般的なAIモデルの学習では、多様なデータセットを活用することで、より汎用性なAIモデルを構築できる。例えば、さまざまなポーズや場所で撮影された鳥の画像を1000枚学習すれば、かなりの精度で識別できるようになる。一方で、フューショット学習ではわずかなサンプルしか用いないため、新しいデータに対する識別精度は低下する可能性がある。
AIモデルは、大量のデータからパターンを学習し、関係性を構築する。特に複雑なタスクでは、大量のデータが必要となるケースが大半だ。フューショット学習では十分なデータを得られないため、複雑な分析や判断が求められるタスクには適さない場合がある。
フューショット学習で用いるデータ量は少ないため、誤ったデータ(ノイズ)や不完全なデータの影響を大きく受けやすい。その結果、モデル全体の精度が著しく低下する可能性があるため、データの選定が極めて重要になる。
フューショット学習では、少ないデータから学習するため、モデルがデータの特徴を抽出するのではなく、単に記憶してしまう「過学習」のリスクがある。この場合、学習データに対しては良い結果が出るが、実際の運用環境では精度が低下する可能性がある。
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